チルチンびと112号「60代、70代 夢を叶えた家」
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骨董に夢中な日々 千秋さんが京都市北区の実家で店を始めたのは42歳の時。共働きをしていた夫婦が周囲に多く、お母様も小学校の先生から国会議員になり、東京で活動していた。「その頃は子育ても一段落していて、自分も何か生きがいを見つけなければ、という焦りがあったかもしれません。結婚して伏見に住んでいたのですが、母の上京を機に夫と実家に戻ることになり、父や祖母の手伝いをしながら妹も一緒に暮らして、家族で母の仕事を応援していました」。  庭に咲いていた花水木をそのまま屋号にした。当時まだほとんどなかった自宅ショップを開いたきっかけは、友人の故・四宮サエ子さんの影響が大きかった。 「彼女の家を初めて訪ねたとき、古いものがセンスよく置かれているのにびっくり仰天しました。全身骨董みたいな人で、憧れたんでしょうね。店を始めてからも抜群の感性でスタイリングをしてくれたり、場所を紹介してくれたりして、ずっと背中を押してくれていた恩人です。二人で古道具屋さんを巡っては、私が先に見つけた!なんて喧嘩ばっかりしてましたけど。生きててくれたらな、もっと一緒にいろんなことしたかったなと思います」。 店を始めてからは自転車で京都市内の骨董屋という骨董屋を巡り、新潟に骨董祭があるといえば夜行バスで往復し、東京にいい骨董屋があると聞けば日帰りで往復した。「とにかく探して回るのが楽しかったですね。敷居の高そうなお店でも平気で こんにちはーなんて入っていって。今から思うと恥ずかしいですけど、それまで主婦でしたから何もお店のこと知らないし、帳簿もない。儲けなんて考えてませんでした」。  仕入れたものを家に飾って訪ねてきた人に見てもらったり、実際に使ってもらったりして、欲しいと言われればその場で値付けをする。ものがなくなればまた仕入れに出かける、その繰り返しの日々だった

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