雑誌「チルチンびと」108号 -いい家の条件-
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47いる。 3「撫でるような力加減」が施工のコツだ。 4完成した「糊差し仕上げ」の壁。 5ていねいな「切り回し」。養生テープは汚れ防止というよりは塗りの目安なのだそう。右ページ/施工現場で。和室の壁を仕上げる深町さん。 1土、振るった砂、藁スサをベースとした材料。 2兵庫県三木市の鏝鍛冶屋で特注した鏝。首の硬さを自身の手に合うよう調整して28歳で左官屋を創業  深町徹さんは福岡県出身の33歳。10代の頃からブロック屋、土間屋、住宅メーカーの下請けの左官屋などの仕事に就き、20歳の時に左官職人に弟子入り。8年ほどの修業を経て、「深町左建」を創業した。現在は2人の弟子を持ち、地元福岡を中心に全国各地の左官工事を手がけている。 「テレビで左官職人の仕事を見て、『これが本当の左官仕事だ』と思って。京都や名古屋で修業を積んで弟子上がりした親方のもとに入りました」と深町さん。独立した今も、先進の職人からの学びを大切にしているのだという。「左官業界には『大きな建物をやっているから、手伝いに来てくれ』といったように、声を掛け合う風土があり、紹介や口コミで全国の職人とのつながりができるのです」。 たとえば、と築120~130年の蔵の改修現場の経験を振り返る。「個人邸だったのですが、すべて土の仕上げで、勉強になりました。有名な棟梁と左官の現場です。そういう方と仕事をすると初心に返ります。自分もそれなりに自信があってお手伝いに行かせていただくのですが、戻ってくる時は鼻を折られていて」と笑う。また「古い建物の壁が100年以上前の人が手がけたものだと思うと、ゾクゾクしましたね」といい、「なるべく昔からある素材で。味が出ずさらっとした、伝統的な仕事がしたい」と自身のめざすスタイルを語った。福岡県●12534

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