住宅雑誌『チルチンびと』104号 -コンパクトな家-
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ダイニング側からの磐梯山の眺め。座高を抑えた(36㎝)造作ソファは、ゆったりとした視線をつくる。背面にはヒーターを仕込み、窓辺の冷気を和らげている。73思いのほか興味深い経験をした。 ふだんの新作の取り組みでは、それが立地する土地や環境のありようを読み、そこに過ごす人たちの希望を受け止めて、場所や空間のありようを紡ぐ。一方改修は、いうまでもなく既存の建屋の観察から利用可能な部分や整理の個所を仕分けして、その骨格をあらためて読み解きながら新たな居場所への再生を図る。自分の中の一貫した構成的な判断でなく、すでにあるものの枠取りの中に居場所のありようを刻みだしていく作業である。 このロッジは、福島県の裏磐梯で取り組んだホテルの附属施設として、その近くにあった古い山荘を改修したものである。特定の個人のものでなく、数人が滞在してしばらくの時を過ごす場所のありようを求められた。 『チルチンびと』の今号は「間」をテーマにした特集だという。ものや空間の寸法としての「間尺」、人と人の「間合い」。「間」の意味は多様で、設計の要としても絶えずある問題だ。 この取り組みでは、ことのほかそのことを意識することになったと言ってもいい。新作の場合の必要に応じて自由に定められる寸法

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