住宅雑誌『チルチンびと』100号 -木と土の家・親子の距離と間取り-
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木と土の家は住む人にも環境にもやさしい未来を考えた暮らし方山口県山口市阿知須設計・施工=山口民家作事組写真=畑 耕岡﨑木材工業㈱繁村 隆行設計工房 みよし一級建築士事務所三好 進㈲くまがい工務店熊谷 龍夫重黒木建築・家具工房重黒木 孝治山口県産業技術センター水沼 信 「山口県にふさわしい住宅はどんな住宅か?」を行政、建築士会、工務店、研究者らと議論する中で、皆さんの想いが「伝統民家派」と「最先端住宅派」にハッキリ二分されていると感じました。果たしてそうだろうかと研究し、どちらでもない「中庸の住宅」こそが山口県のような温暖で、かつ敷地に余裕があるような地域にふさわしい住宅だという結論にたどり着きました。 そこから生まれたのが「阿知須・木と土の家」です。不易流行――伝統的なもののいいところは残し、弱みを新しい技術で補うことですぐれた家をつくります。山口県産業技術センター水沼 信不易流行…不易は詩の基本である永遠性。流行はその時々の新風の体。共に風雅の誠から出るものであるから、根元においては一であるという。(『広辞苑』より) 俳人・松尾芭蕉の「不易流行」の言葉を借りた家づくりをめざす、山口民家作事組が発足したのは平成11年、今年で20年目となる。当初は、県内での古民家再生の普及のため、古民家の構造耐力調査や温熱環境測定など、研究調査を主に行っていた。ある時、一般市民から山口県の集落にある築130年の古民家の改修計画が舞い込んできた。計画を進める中、民家周辺で休耕田の再生や植物の栽培、家畜の飼育など、集落での暮らしを疑似体験し、古くからその地域に根ざした家での生活文化を肌で感じた。この経験は、日本の風土に合う家はやはり日本に古くから伝わる自然素材の家であり、地域の材料を地域の職人の手により活用することこそ、風土に根ざした家づくりなのだという理想にも繋がっていった。そして、これまでの古民家調査で得た知識をもとに、日本に古くから伝わる土壁を使い、土壁に足りない断熱性を補った家づくりの構想が始まった。 2016年、彼らの熱意と技術を詰め込んだ家がついに完成した。それが「阿知須・木と土の家」である。46

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