雑誌「チルチンびと」97号掲載「小笠原からの手紙」 
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129のが見つかることもある。 小笠原は亜熱帯にあり、なおかつ海洋島ということもあり、そこに棲む生き物は特殊なものが多い。中でも固有種と呼ばれる、小笠原やこの周辺にしか生息しない種類が多くいる。磯ではたくさんの種類の生物に出会えるし、その密度も高い。小笠原を訪れる機会があれば、ぜひ磯を覗いてみてほしい。きっと、ガイドブックには載っていない小笠原の魅力に取りつかれることだろう。いほどの大きさになる。オニイボナマコ、トゲオオイカリナマコなど見るからに危なそうと感じられる模様をしたナマコもいるが、危害を加えるようなものはいない。 ただ、ナマコにはキュビエ器官という防御のための粘液がついた白い糸を出す種類がいる。このネバネバが魚の鰓につくと呼吸できなくなるほど強力で、手についても厄介である。しかし、中にはきれいなキュビエ器官を出すものもあり、見るだけなら楽しい。ウミシダはこれら棘皮動物の祖先型といわれる動物で、鮮やかな色のもことが多いが、再生途中では元の1本だけが大きく、再生した足が小さいので、絵に描いたほうき星(彗星)のような形になる。ちなみに、ゴマフヒトデは分類上、ホウキボシ科と呼ばれるグループに属する。 ヒトデには色のきれいなものもいる。ヒメカンムリヒトデ、アオヒトデ、ニセアライボヒトデなど、見つけると楽しい。 大きいナマコも大潮の日には足元に現れる。地元ではゾウリゲタと呼ばれるクリイロナマコは、子どもの手では両手でないと持てなめると30センチ以上にもなり、まさにウニの王様である。パイプウニはもう少し小さくなるが、赤い色が美しい。小笠原のパイプウニはトゲの断面が三角で、かつてはミツカドパイプウニといわれていたが、今では他地域と同じパイプウニと呼ばれている。形が珍しいものにジンガサウニがいる。「陣笠」から来た名前で、本州にも少し分布するが、小笠原には多い。 ヒトデの仲間ではゴマフヒトデがよく見られる。このヒトデは再生力が強く、足1本からでも再生して1匹に戻る。5~6本足のNatureしんぎょううち・ひろし/1957年東京生まれ。初めて小笠原を訪れたのは30年前。都立高校で生物教諭として勤務する傍ら、神奈川の海で生物の観察・研究を続けてきた。2014年に都立小笠原高校に赴任。小笠原野生生物研究会会員。大きい岩の隙間に隠れていて、一見機雷のようにも見える。パイプウニと違いトゲに付着物が付く。鮮やかなオレンジ色に白い突起。12〜17本ある腕長は60㎜くらい。少しつぶれたコッペパン型。おとなしく、ただ寝そべっている。キュビエ器官も出さない。キュビエ器官は、投げ網状や細い糸状などさまざま。こんな春雨のようなものも。バクダンウニと同じく大型の南方系。色は鮮やかな赤、白が混ざるもの、くすんだ茶色などさまざま。色は青から黄色まで変化に富む。腕の長さは100㎜以上になる。棘皮動物の中で最も原始的といわれる。羽状の部分はガサガサとしていて岩やサンゴに付着する。上から、再生の初め→再生途中→再生完了となる。生殖の手段として、自切する。腕長30㎜。個性豊かな小笠原の磯バクダンウニヒメカンムリヒトデクリイロナマコニセトラフナマコのキュビエ器官ゴマフヒトデパイプウニアオヒトデウミシダの一種

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