雑誌「チルチンびと」83号掲載 小笠原からの手紙
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通し回遊する生物たち。 6:フネアマガイ。かすり模様が特徴的である。 7:ヤマトヌマエビ。尾部の青いスポットがよく目立つ。 8:トゲナシヌマエビ。小笠原で最も普通に見られる淡水エビだ。 9:オガサワラモクズガニは冬から春に海に降り産卵する。オオヒキガエルを襲って食べることもある大型のカニ。5:小笠原諸島最大の河川、八瀬川の下流。小笠原にはマングローブ林がなく、オオハマボウやモモタマナなどの海岸林が川岸に生育する。 多くの日本人にとって川はなじみ深く、あるのが当たり前の自然環境かもしれない。しかし、太平洋の島々では川はとても貴重な存在である。南太平洋には環礁の島が多い。ツバルやマーシャル諸島がその代表だ。環礁は平らな陸地が円形に連なり、山地を欠くために川が形成されない。山があればよいというものでもない。南硫黄島は小笠原で最も原生の自然が残る特別な島である。川があるのならぜひ水生生物を調べてみたい。ところが、南硫黄島の平均斜度は45度もあり、降った雨はあっという間に海に流れ落ちてしまう。南硫黄島は山が急峻すぎるために川ができないのである。このような島は、小笠原の南に連なる北マリアナ諸島に多い。 小笠原の有人島、父島と母島には小さいながら幾本もの川が流れている。この貴重な川から、私たち島民は生活に必要な水を得ている。そして、その小さな流れは、ユニークな水生生物たちの生活の場でもあるのだ。 小笠原諸島は大陸から遠く離世界自然遺産に登録され注目を集める、小笠原の豊かな自然と文化を、現地在住の研究者が紹介します。文、写真・佐々木哲朗オガサワラヨシノボリの暮らし島の川事情ささき・てつろう/1976年生まれ。東京都調布市育ち。小笠原自然文化研究所副理事長。大学生時代にアオウミガメの調査ボランティアに参加するため、初めて小笠原を訪れる。青い海と不思議な自然に魅せられて後に移住。PROFILE小さな川に暮らす水生生物たちvol.171:父島の上流域。オガサワラヨシノボリを育む。 2:成熟したオガサワラヨシノボリの雄の体色は美しい。 3:石の裏に産みつけられたオガサワラヨシノボリの卵。仔魚が透けて見える。 4:カエルのような愛嬌のある顔をしているオガサワラヨシノボリ。312456897142

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