雑誌「チルチンびと」69号掲載 小笠原からの手紙
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小笠原からの手紙③ 文と写真*安井隆弥 父島を歩いてみよう 三日月山・宮之浜・ 長崎展望台  三日月山は父島の市街地の北西にある山で、車やバイクで10 分足らず、徒歩でも30 分ほどで行くことができる。頂上近くには戦跡への横道がある。登りきったところにクジラを見る施設があり、シーズンには賑わう。また、夕暮れには日没の太陽を見る人びとが集まる。ここより先へ車は入れないが、さらに数百メートル行くと断崖の上に見晴らし場所があり、市街地や二見湾が見下ろせる。道沿いにはタコノキ、ムニンヒメツバキ、オガサワラビロウなどが観察できる。  宮之浜は父島の北側の静かな入り江で、市街地からバイクや車で10 分足らずで行ける。海を隔てて兄島が目の前に見える。テリハボクやモモタマナなどが繁る。比較的涼しく海もきれいで、熱帯の魚もいろいろ見られる。島の人が家族連れで海水浴や涼みにくる場所でもある。 トレッキングの好きな人には、ここから海寄りの尾根伝いに釣浜駐車場への遊歩道があり、兄島や人麻呂島を眺めながら歩くのも爽快である。シマイスノキやテリハハマボウなどの固有種が見られる。 釣浜駐車場からさらに東へ向かう遊歩道は、右手に二見湾や町並みを見下ろす。道沿いにヒメフトモモやハツバキなどが見られ、急な坂を登りきると左手に瀬戸を隔てて兄島の見みかえりやま返山が現れる。このへんは外来種のリュウキュウマツやモクマオウを除伐したので、きれいな乾性低木林が広がり、シマムロ、ムニンネズミモチ、ムニンビャクダンなどが見られる。 岬の展望台からは向かいに兄島が広がり、東には東島を、眼下には海に突 三日月山展望台からの眺め。眼下に長崎を臨む。宮之浜から海を隔てて兄島を見る。オガサワラビロウシュロに似たヤシ科の植物で、初冬に淡黄色の円錐花序を垂らす。タコノキ名前は、気根を垂らしタコのように見えることから。果実は食用になる。ムニンネズミモチ乾いた尾根筋にみられる、春先に白い花をたくさんつける常緑低木。テリハハマボウハイビスカスの仲間で、花の色が黄色から赤に1日で変化する。

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