雑誌「チルチンびと」93号掲載 「京都大原の山里に暮らし始めて」梶山正
6/10

47れる課題に、背伸びせず、一つひとつ取り組んでいこうと思うようになった。ここ大原での毎日の生活は、まさにその繰り返しである。 ベニシアも若い頃、周囲の貴族社会を見て生き方に疑問を持ち、インドを貧乏旅行している。彼女の曾祖父の兄のカーゾンは、インド総督兼副王の地位に7年間あり、また、明治初期の日本にも数回来訪している。カーゾンの影響を受けてか、ベニシアもインドや日本に目を向け、足を延ばすことにした。英国貴族の彼女と日本平民の僕は、違うところが星の数ほどある。でも、二人がそれぞれ心に刻んできたものには、共通するものも少なくないようだ。この人生の旅路で、人間のベースと言ったらいいのか、人の虚飾ない心の原点に触れる経験があったのだろう。それが互いに感じられ、この上なく大切にしているから、一緒にいられるのかもしれない。 66歳という年齢のせいか、体力的にベニ上/軒下にハーブを吊るして乾燥させる。 下/キッチンの棚には豆や穀類を入れた瓶やハーブとティーカップが並ぶ。 右/手づくりハーブティーを缶に保存しておく。 右下/英国から遊びに来た友人が、初めてすき焼きに挑戦中。 右ページ/夏のあいだ日陰をくれたホップは、秋になると葉を落として暖かな日差しをくれる。

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る