雑誌「チルチンびと」81号掲載 京都大原の山里に暮らし始めて 梶山正
5/8

10僕たちに見せてくれた。ベニシアによる「自然体」な雰囲気を僕も理解できた。お金をかけなくてもていねいに一つずつ修理をし、愛情をこめて日々を暮らしていくことが大切なのだと、この家は無言で語りかけていた。タダで家を借りることができたのはラッキーと言えるが、椿野家の皆が住める状態に持って行くまでは、がんばりが必要だった。 「初めてこの家の中を見たときは、どんな感じだった?」と僕。 「家の中は暗くて、仏壇の前には紫色の座布団が敷かれたままでした……」。おそらく、ここに暮らしていた老父のお葬式が終わったときから、あまり手を付けられずにいたのだろう。老父の服が入った家具や布団なども生前のまま。ある部屋は、床にブルーシートが敷き詰められていた。それをめくると絨毯が敷かれてあり、その下の畳はほとんどが腐っていた。屋根に上がってみると、瓦が20枚ほどダメになっていて、おそらく、そこから雨漏りしていたのもとは池だったところを、お茶を楽しむくつろぎスペースに。池の縁をベンチに変えて、テーブルを置いた。上:バッキー愛用の庭仕事道具。 右:めいちゃんは、現在ピアノとスイミングに夢中。

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る