雑誌「チルチンびと」72号掲載 京都大原の山里に暮らし始めて 梶山正
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P13 屋根瓦葺き替えを 工務店に依頼  4年前の大原盆踊り大会で、ベニ シアは会場で運営の手伝いをしてい た橋本勝三さんと知り合った。彼の 次男はレストランをやっているそう だ。数日後にそのレストランを訪ね た僕たちは、おいしい料理にとても 満足した。それだけでなく、店の落 ち着いた雰囲気もいいなと思った。 フランス料理レストランだが、お店 は伝統的な和風建築。大工である父 親の橋本さんが造ったそうだ。  ずっと気になっていたことだが、 我が家の屋根の隅木が一カ所腐って いた。隅木とは屋根と屋根の尾根や 谷部分を支える角材のことだ。屋根 の継ぎ目である谷部分に設置されて いる銅製の樋が腐食して、そこから 雨水が染みこんで長い間に隅木が 腐っていたのだ。橋本さんを知った ことで、この隅木の修理を彼に頼み たいと思った。無垢材を使った昔な がらの木の家づくりにこだわってい るということなので、きっとうまく 直してくれるはずだ。  橋本勝工務店が我が家に来てくれ たのは、2010年の秋であった。 まず、橋本さんたちは屋根瓦をめ くってみた。すると問題の隅木だけ でなく、そこら一帯の垂木や野地板 も替えなければならない状態であっ た。その日は暗くなるまで工事が続 いた。  数日後、橋本さんは屋根の状態を 説明しに来てくれた。「予想以上に 傷んでましたよ。無理は言いません が、この機会に屋根の他の箇所もチ ェックした方がいいと思いますよ」  かなりやばい状態の部分が、屋根 の一部にあることを僕もわかってい た。これは猿たちの瓦ズラシを修理 するうちに気づかされたことだ。橋 本さんの屋根チェックによると、今 すぐに葺き替えなくても、いずれ近 いうちにやる方がいいということで あった。  「予算の都合で一度に屋根全面やる のではなく、数回に分けて工事を依 頼する人が多いですよ」とも話して くれたが、どうせやるなら一度に全 面お願いすることにした。瓦だけで なく、屋根の基盤をつくる木材を全 て替えることもすすめられたが、予 算の関係で屋根小舞と野地板だけに する。とはいえ、もしも傷みが激し いならば、それに応じて急きょ隅木 や垂木も替えるということにする。 瓦は、ちょっと高いが寒さに強く長 持ちし、また大原の家のつくりに 合った大和瓦のいぶし瓦をすすめら れた。  2011年3月に屋根瓦葺き替え 工事は始まった。大工さんが4人、 葺き替え職人は3人、それに板金屋 さんが2人、1カ月半の間、我が家 の屋根のために来てくれた。心配し ていた状態の一帯は、シロアリの巣 になっていた。思い切って工事を頼 んで良かったと思う。ゴールデン ウィーク前に工事は無事終了した。 屋根瓦を葺き替えたことで、おそら くこの家はあと100年ぐらい、が んばってくれることだろう。僕も家 に負けないよう長生きしたいものだ。 かじやま・ただし 1959 年長崎県生まれ。写真家。 山岳写真など、自然の風景を主 なテーマに撮影している。登 山ガイドブックほか共著多数。 84 年のヒマラヤ登山の後、自 分の生き方を探すためにインド を放浪し、帰国後まもなく、本 格的なインド料理レストラン 「DiDi」を京都で始める。妻で ハーブ研究家のベニシア・スタ ンリー・スミスさんとはレス トランのお客として知り合い、 92 年に結婚した。 左上/瓦葺き替えが終わって嬉しそうなベニシア。 上/以前の鬼瓦 は庭を飾るオブジェと代わって、第二の人生が始まった。

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