雑誌「チルチンびと」65号掲載 京都大原の山里に暮らし始めて 梶山正
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P3 古いガラス窓は、表面が波打っている。それで、窓越しの庭の花たちもゆがんで見えて楽しい。 大原に引っ越してひと月が流れた。僕とベニシアは来る日も来る日も、家の雑用を続けていた。これが今やらなければならない仕事だと思っていたからだ。そんな僕たちを見て、近所の人たちはたずねてきた。「仕事は何をしているんですか?」  働かなくてもお金が廻るのだろうと見ていた人もいたようだ。  実際は、家を買うのにお金を使い果たしてしまい、安くて栄養価が高い納豆が主菜の生活であった。そのためか、2歳半の悠仁は大の納豆狂いとなった。「ABCDナットウライス♪」と悠仁が口ずさむうちに、近所の子どもたちもその歌を歌い始めた。 家の配線図をつくってみる   やるべきことの一つに電気の問題があった。キッチンでトースターと掃除機を同時に使うと、いつも安全ブレーカーが落ちた。また、2階の部屋の半分は、電気がどこかで止まっていた。おそらく、こんな時は、業者に見てもらうのが普通だろう。とはいえ〝納豆生活経済状態〞である。とりあえず、電気はどうやってこの家へ来ているのか調べてみた。  電気は電力会社によって発電所でつくられる。その電気はまず送電線、次に配電線を通って運ばれ、通常100Vに変圧された後、電柱から各家のメーターまでやってくる。そして分電盤へ。分電盤には複数の安全ブレーカーが付いている。安全ブレーカーを経て、電気回路の最終点へ。一般家庭での最終点とは、各部屋に取り付けられているコンセントボックスと引っ掛けシーリング(部屋の天井に付いている照明器具をセットする配線器具)から使える電気であろう。こうして僕たちは発電所から 上/土手で摘んだネコヤナギと庭の菜の花、紅梅を玄関に飾った。友人がタケノコを掘って来たので、 下/3月上旬、梅がたくさん花さっそく茹でる準備をした。を咲かせた。

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