雑誌「チルチンびと」 脱原発のために私たちができること「ドイツ、スイスに学ぶ脱原発都市の実践」
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198 上/ルードルフさん。モミの木の香りをチェックしている。 左上/休憩所兼農具小 屋を各区画に設置することができる。 左下/各区画への入り口。  ルードルフさん宅のケラー。有機栽培で育てた果物のジャムをビン詰めにして 備蓄している。 これは限られた雨水を共同で使うための工 夫でもある。  利用の仕方についても取り決めがあり、 区画内面積の3分の1は野菜、果物、ベ リー、3分の1は草花や低木に利用しなけ ればならない。また、収穫した作物を販売 することは禁止されている。  騒音の面でも配慮があり、グリルパー ティなどは隣人に知らせてから。音楽など は鳴らさないことになっている。  このように、詳細に決められたルール は、区画内を整理整頓し、仲間同士、お隣 同士で気持ちよく農作業を楽しむための重 要な前提となっている。ルール違反した場 合は罰金が科せられることがある。たとえ ば区画内で廃棄物の焼却をした場合の罰金 は500ユーロと厳しい。 クラインガルテンの楽しみ方  もっとも、利用者はルールをも楽しみな がら全体としての市民農園を大切に育んで いる。  利用者層はさまざまで、会社帰りにサラ ダ用の野菜を摘んで帰る人や、週末には家 族総出で草むしりをするなど、平均して週 に2回ほどはクラインガルテンでの作業を 楽しんでいるようだ。  それぞれの区画が個性にあふれ、それら を観察しながらの散歩は利用者でなくても 楽しいものだ。整然とした素晴らしい庭園 には高齢者の姿をよく見かけるし、小さな ブランコやパン焼き窯がある区画もある。 子どもたちに安全な食物を与えたいという 思いから有機農法で自家用の野菜や果物を 育てている人や、収穫した農作物でジャム やジュースのビン詰め1年分をつくってし まう人もいる。  利用者の一人ルードルフ・ルーエさんも 家族が食べる野菜や果物をすべてつくって きた。「化学肥料や農薬漬けの食物を子ど もたちに与えたくなかった」とのこと。   現在は独立し結婚した三人のお子さんの ために、クリスマス用のモミの木も植林し 育てている。 ますます盛り上がる市民農園  クラインガルテンをはじめとするドイツ 市民による農園づくりは、1980年代に 深刻化した環境破壊や農薬問題が背景と なって盛り上がりを見せ、今日では都心に 暮らす人の手軽なレクリエーションとして 親しまれ、さらに土と親しむことによるテ ラピー効果も期待されるなど、時代ととも にますます発展している。

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