雑誌「チルチンびと」 72号掲載 人を生かし風土を生かす家づくり 福島編
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築家・泉幸甫さん。増子建築工業の持つ伝統的な大工技術を生かしつつ、1階和室では部材を減らしてすっきり見せるため、梁と鴨居を一体に。また、窓枠の見付け(正面から見た厚み)を12ミリ、チリ(壁からの出幅)を3ミリと薄くし、細部まで美しい空間をつくり出した。 福島人のための家  二間続きの和室。これは福島の伝統的な生活文化にも沿うと増子社長は言う。「郡山では結納や葬式、納棺を家でやる人がまだまだ多いので、こういう部屋が必要なんですよ」。「伝統とデザイン、そして暮らし方をプラスして家づくりを考えてもらいたいです」と則満さんが続ける。こうした発想は、地域に根づく工務店にしかできない。このモデルは福島の人が、福島で暮らしていくための家..。建築中、震災で物資調達も遅れる中で完成させたこの家にはそんな気持ちが込められている。  設計者の泉さんも想いは同じだ。泉さんは以前から地域工務店と協働することで、画一的なハウスメーカーの家ばかりになってしまった日本の町並みを美しく変えたい、そして家づくりを通じて地域の職人が持つ技術を次代に継承したいと訴えてきた。その考えは、築家がどのように震災とかかわっていくのかとも重なる。「地域の人がその手で復興を担うというのが大切だと思うんです。県外から大企業が入ってきてスピードや効率だけで復興が進み、地域文化が失われるのが心配です。そんな視点を持って復興のお手伝いができ ればと思っています」2階。幅45㎜の垂木がリズム良く並ぶ。床にも地松を用いた。奥 の和箪笥は増子社長が修理したアンティーク品。 右から時計回りに /立派な棟木。 /鉄製の手すりに縄を巻い た。 /柿渋染め和紙の扉。 /ランプシェードも和紙。 /模 様が美しい襖。

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