雑誌「チルチンびと」 72号掲載 人を生かし風土を生かす家づくり 福島編
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にはログ工法を用いたものなどいくつかのタイプがあるが、同社では県産の30ミリ厚杉板で断熱シートと空気層を挟み込んだパネルをつくり、軸組の溝に落とし込む伝統的な板倉
構法を採用。また、1戸1戸の間に60 センチの隙間を空け、遮音性に配慮。棟と棟の開口部を向かい合わせにし、それぞれに縁側を設けることで住む人同士が声をかけやすい工夫も。入居している渡邉吉廣さんは、「窓を開けたら“おう”って声掛けられる。木の匂いもするし、プレハブより気持ちがいいよ」と、不自由な生活には違いないが、木造仮設の良さを話してくれた。
葛尾村には、地震で全壊した建物は1棟もない。つまり、仮設入居者は、その後の原発の事故で避難を余儀なくされた「純粋な」原発の被害者だ。現在も帰村の目処は立っていない。村では農業を営んでいた人が多いが、「戻れてもまた仕事できるか」と渡邉さんはつぶやく。責任を負うべき東京電力から月々10万円の生活費は支払われているが、故郷を
奪った代償として不十分と言えよう。
集会所も木造で建てられた。入居者の憩いの場所となっている。取材した渡邉さん夫妻。
下の図面の2DK タイプのほか、3DK、1DK がある。 上右/遮音のため60㎝の隙間が
つくられた。 上左/居間開口部に設けられた濡れ縁。 下右/居間。室内も杉の質感が
豊かだ。 下左/床はフローリングが基本だが、増子建築工業で後から畳を敷いた。
設計概要
構造:木造軸組板倉構法
基礎:木杭
外壁:杉板(厚30㎜)2重張り
屋根:折板
破風板:木下地+カラー鋼板
玄関上り口:木製踏板
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