雑誌「チルチンびと」 パッシブでアクティブな暮らし
7/12

日本の伝統的家屋が大事にしてきた「風通 し」を重視し、なおかつ断熱性と両立させよ うと考えたのが、この工法。  壁と屋根の内部で、断熱材の室内側と室外 側にそれぞれの通気層を設け、棟の部分や床 下など各要所に換気口を取り付け、特に室内 側通気層につながる部分は熱を感知して開閉 する形状記憶合金を用いた換気口を取り付け ている。これにより室内側の通気層は夏季は 開放し冬季は閉じた状態になる。室外側の通 気層は年間を通して内外を空気が循環する。  このことから、夏季は通気層内に起きる上 昇気流を利用して建物内の無駄な熱を室外に 排出し、冬は暖かな空気で家全体を包み込む ことができる。  また、内壁を透湿性のある材料で仕上げる ことにより、通気層を介して室内の無駄な湿 気や有害物質を室外に排出できる。  この工法の性能を調べるため、開発メー カー・ウッドビルドは、断熱性能が同じ2棟 の建物で、エアコンの省エネ効果を実験した。 一方は室内壁の仕上材に透湿性クロスを使用 したWB工法。もう一方は室内壁の仕上材に ビニルクロスを使用した一般気密住宅。両方 の室内で大人二人が生活することを想定し、 エアコンを使用した場合の効率を実験した。  仙台、東京、名古屋、大阪、福岡の気候条 件を元にシミュレーションした結果を平均 すると、約 15 %のエアコン使用の削減効果が 得られた(グラフは仙台と東京の実験結果)。 WB工法の建物では室内の湿度が低く抑えら れるため、冷房の負荷も15 %近く削減される ことが認められた。  高温多湿の日本にふさわしい工法であるこ とが、この実験からわかる。 パッシブシステムカタログ 前項でパッシブシステムの基本的な考え方を解説してもらった。では、今日本にどのようなパッ シブシステムがあるのか。さまざまな工務店が採用している代表的なシステムを紹介する。 空気を壁と屋根に循環させる ●通気断熱WB工法 http://www.wb-koho.com WB工法の住宅と一般気密住宅における省エネ効果シミュレーション。い ずれも機械換気0.5 回/ 時を回し、室内において二人分の発熱と発湿を行っ ている。※潜熱負荷/空調設備の熱負荷を計算するときの外と室内の空気 の絶対湿度差による熱量 夏季は室内側、室外側二 つの通気層が開放される。 冬季は室内側の通気層が閉じられ、 室外側の通気層のみ開放される。 形状記憶式自動開閉装置 (アンダーヘルス)閉じている 形状記憶式自動開閉装置 (バリアーヘルス)閉じている 形状記憶式自動開閉装置 ( バリアーヘルス)開いている 形状記憶式自動開閉装置 (アンダーヘルス)開いている 夏 冬 全熱負荷[MJ] 全熱負荷[MJ] 1 月 1 月 2 月 2 月 3 月 3 月 4 月 4 月 5 月 5 月 6 月 6 月 7 月 7 月 8 月 8 月 9 月 9 月 10 月 10 月 11 月 11 月 12 月 12 月 仙台での負荷削減効果 冷房潜熱負荷の41.5%を削減 冷房負荷の17.0%を削減 年間の暖冷房負荷の5.3%を削減 東京での負荷削減効果 冷房潜熱負荷の50.6%を削減 冷房負荷の14.3%を削減 年間の暖冷房負荷の8.2%を削減 6000 6000 5000 5000 4000 4000 3000 3000 2000 2000 1000 1000 0 0 気密住宅 WB 工法 気密住宅 WB 工法

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です