雑誌「チルチンびと」 パッシブでアクティブな暮らし
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取り込み住宅の躯体に溜まった太陽の熱もあ ります。これらの熱が逃げなければ暖房の使 用も随分と抑えることができます。 ●住宅内の温度差を小さくする  住宅全体の断熱性能が高めると、極端に 温度が低い部屋や部位を減らすことができま す。たとえば部屋から廊下に出たときに、極 端な温度差があるととても不快です。また温 度が極端に低い部分があると気流が発生し、 寒さを感じさせます。 〈2〉 太陽の熱を取り込む  室内に太陽の熱を十分に取り込むことがで きれば、暖房設備を使用する以前の寒さを 和らげることができ、また暖房に必要なエネ ルギーも削減することができます。どのよう に太陽の熱を集めるか(集熱)、集めた熱を どのように蓄えるか(蓄熱)、そしてその熱を どのように配るか(配熱)が重要で、現在さま ざまなパッシブなデザイン手法や技術の開発 が進められています。 【太陽の熱を活用するパッシブ・デザインの例】 ・大きな開口部を設け、室内に日射を取り 込む(図10)  最も基本的なパッシブ・デザインです。日射 が当たる床面や壁面に、熱を蓄える素材を配 置して蓄えることもできます。温められた床や 壁(蓄熱部位)は、日中室内に放熱するだけ でなく、夜間もゆっくり放熱し、部屋を温め ます。ただし、住宅が十分に断熱されていない と蓄熱部位がすぐに冷えてしまいます。また、 夏には蓄熱部位に熱が蓄えられないよう工夫 しないと、室内が熱くなってしまいます。 ・サンルームに蓄熱し、室内に暖気を送り込 む(図11)  南側に設けたサンルームで十分に日射を受 け蓄熱しながらサンルーム内の空気を温め、 温まった空気を室内に送り込む方法です。サ ンルームに連続する部屋であれば建具を開け 放ち、また離れた部屋であれば送風ファンな どで暖気を送り込みます。サンルームの室温 が下がった場合には建具を閉じたりファンを 止めます。  夏の日中はサンルーム自体が非常に暑く なってしまいがちなので、日射をさえぎった り風通しをよくするほかサンルームと室内を 建具で切り離すことなどが必要です。 ・屋根面や壁面で空気を温め、室内に暖気を 送り込む(図12)  太陽の日射を多く受ける屋根面や壁面の 内側に設けた空気層で空気を温め、その暖気 を室内に送り込む方法です。ダクトを設置 し、送風ファンで暖気を一度床下に送り込ん でから徐々に室内に巡らせます。床下のコン クリートや蓄熱材に蓄熱することで、夜間も 暖気を供給することができるシステムなどが あります。床下から1階の部屋、そして2階 の部屋へと暖気をゆっくりと流す工夫をする ことで、住宅全体に暖気を行き渡らせること ができます。  夏には、屋根面や壁面で温められた空気を そのまま排出することで、余計な暖気を室内 に取り込まないようにします。 ・屋根面や壁面で空気を温め、壁体内を巡ら せる(図13)  ・と同様に屋根面や壁面の内側の空気層 で空気を温めますが、その暖気を室内に送り 込むのではなく、壁体内に巡らせる方法です。 外壁や天井裏、床下、内壁や2階床などの 内部をつなぎ空気が流れる通り道を確保し、 そこに暖気を巡らせます。通常、外壁は断熱 されているので、断熱の外側から内側に暖気 を送り込む技術がカギになります。・と同 様に床下の土間を蓄熱体として利用すること もあります。住宅全体の壁や床の中に暖気 が巡ることで、住宅全体に温かさを行き渡ら せることができます。  夏には、屋根面や壁面で温められた空気を そのまま排出しながら、外壁下部や床下の吸 気孔から冷気を取り入れることで、壁体の温 度上昇を抑制します。  いずれの手法にせよ、冬に十分な日射が 得られる敷地であることと得られた熱を逃が しにくい断熱性能を有していることが大切で す。十分な断熱性能とこれら太陽熱をパッシ ブに生かすデザインの効果は、「住宅全体を ほんわかと温かくする」「ひどく寒い、冷た い部屋がなくなる」こと、つまり、太陽のエ ネルギーで住宅全体を「予熱」するデザイン といえます。予熱だけでも十分に暖かく過ご せれば最も効果的ですし、暖房が必要な場 合でも暖房用エネルギーを削減できます。 〈3〉 冬のパッシブデザインを生かす工夫  このような冬のパッシブ住宅の良さを生か すためには、ほかにも工夫したいポイントが あります。 ・暖房の効果が住宅全体に伝わる間取り  住宅内に暖かい場所から寒い場所に移動 すると、「寒さ」を感じます。基本的にパッ シブ住宅では、部屋同士の温度差が小さく なるように高い断熱性能と太陽熱を利用す る技術を採用していますが、区切られた部屋 を暖房するとどうしても部屋同士で温度差が 生じます。そこで、暖房により温められた空 気が効率よく住宅全体に行きわたるよう、開 図10 開口部から日射を取り込む方法 図11 サンルームを設置する方法 図12 屋根や壁面で温めた暖気を 室内に送り込む方法 図13 屋根や壁面で温めた暖気を 壁内に巡らせる方法

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