雑誌「チルチンびと」 パッシブでアクティブな暮らし
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の窓が開放され、熱い外気を室内に取り込 んでしまうと、蓄えた涼しさを感じにくく なってしまいますが、たとえば午前中の間 は冷房しないでも済むといった効果があり ます。 〈4〉 夏のパッシブ・デザインを生かす工夫  このような夏のパッシブ住宅の良さを生 かすためには、ほかにも工夫したいポイン トがあります。 ・室内で発生する熱を減らす工夫 「太陽の熱(日射)を遮る」の部分でも述 べましたが、夏に室内で発生する熱は、断 熱性の高い住宅の室内を涼しく保 つ上で非常に厄介な存在です。テ レビやパソコン、家電機器などは、 実は室内の熱源でもあります。で きるだけ効率のよい機器を選択す ると、単に機器そのものが省エネ になるだけでなく、夏の冷房負荷 を減らすことにも寄与します。  また、キッチンや浴室などでは 大量の熱が発生します。それらの 熱は、しっかりその場所で室外に 排出し、ほかの部屋に暖気を送ら ないようにしましょう。 ・ひんやり感じさせる工夫  人が暑さを感じる要因は、気温 だけではありません。一つには壁 や床の「表面温度」があります。 壁や床と人の間では、「輻射」によ る熱のやり取りが行われていて、 壁や床の表面温度が高いと、壁や 床の温度が輻射により人に伝わり、室温が 低くても「ほてり」を感じます。外気が涼 しい時間帯等にできるだけ室内に風を取り 込むことは、室温を下げるだけでなく、壁 や床の表面温度を下げる効果もあります。 壁体内に涼気を送り込み住宅全体の壁の表 面温度の上昇を抑えることをめざしたシス テムも開発されています(図8)。  また、「接触温度」の要因もあります。 同じ表面温度でも素材によって、人が触れ たときにひんやりと感じる度合いが異なり ます。これは素材の「熱伝導率」の違いに 起因します。たとえば、室内に置いてある 木と金属の温度は同じですが、これらに触 れた時金属はひんやり感じるはずです  壁や床などにはひんやり感じられる建材 を選びます。土壁や漆喰壁、土間などは表 面温度の面でも接触温度の面でも、さらに は涼しさを蓄えるという面からもすぐれて おり、夏にひんやり感じることができます。 ・住宅のまわりを涼しくする工夫  風通しをよくしたり、涼風で蓄冷しよう と思っても、それに適した涼気が住宅のま わりに存在しなければ、「窓を開けたい」「空 気を取り入れたい」とは思えません。そこ で、住宅のまわりに、涼気の取り入れ位置 を植栽位置と考慮しながら樹木を配置しま す。樹木は緑陰をつくり、家のまわりに熱 をためない効果と、樹木自身の蒸散効果に よって涼気を生む効果があります(図9)。 2 冬のパッシブ・デザイン  冬に室内で快適に過ごすためには、何と いっても室内の「温かさ」が大切です。で きるだけ暖房設備を使わずに快適な室内環 境を形成することをめざします。 〈1〉 断熱性能を高める  冬、室内を温かく保つためには、まずは 断熱性能を高めることが大切です。それに より、次のような効果が得られます。 ●室内の熱を逃がさない  室内の熱源は暖房設備だけではありませ ん。生活する人や家電機器が発する熱、日中 写真5 北側の日陰部分に涼しさを蓄える 石畳を設置した例(事例・) 図8 上部から壁体内の熱気を排出しなが ら、下部から外気を送り込むシステムの例 図9 落葉樹による夏の天蓋効果 図7 パッシブ・デザインの基本的な考え方(図案/岩村アトリエ) 写真6 庭先の植栽と多孔質な石材に散水し涼をとる例 (事例・)

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