雑誌「チルチンびと」 パッシブでアクティブな暮らし
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ば、パッシブ・デザインを核にして自然エ ネルギーの利用を最大化しながら太陽光発 電などを導入することがすでに可能です。 パッシブ住宅の取り組み  住宅において自然エネルギーを効果的に 取り入れるパッシブ・デザインの取り組み を見てみましょう(図7)。 1 夏のパッシブ・デザイン  夏、冷房設備を極力使わずに心地よく過 ごすため、室内で「涼しさ」を感じられる 室内環境の実現をめざします。 〈1〉太陽の熱(日射)を遮る  冬のパッシブ・デザインのためには、住 宅の断熱性を高めることが必要となります が、断熱性を高めると、夏にはどうしても 熱がこもってしまいがちです。室内の熱に は、人や家電機器など室内で発生する熱も ありますが、もう一つ、住宅の屋根や壁を 通して室内に伝わったり窓から差し込む太 陽の熱があります。冬には強い味方の太陽 の熱ですが、夏は手ごわい敵になってしま うのです。そこで、夏のパッシブ・デザイ ンでは、この太陽熱の侵入をできるだけ防 ぐことが大切で す。  住宅の躯体の 中で最も太陽の 熱を受ける部位 は、晴れた日に は一日中受熱す る屋根面です。 したがって夏に太陽の熱を遮る上で屋根の 断熱は極めて重要になります。窓まわりに ついては、軒や庇、ルーバーや外付けのブ ラインド、鎧 よろい 戸などで徹底的に太陽の熱を 遮ります。古くから用いられる簾やヨシズ も有効です。ただし、できるだけ窓の外側 で遮ることがポイント。内付けブラインド やカーテンなどは、日射しを遮ったとして も、熱は室内に侵入してしまうからです。  中・高木を植えたり、壁面や屋根面を緑 化するなど、植物を利用して屋根面や壁面、 窓まわりに緑陰をつくることも有効な方法 です。単に日射を遮るだけでなく、植物の もつ蒸散機能が涼しさも生みだします。 〈2〉風通しをよくする  夏に室内環境を快適にするためには、室 内にたまった熱を外に逃がすこと、室内で ゆるやかに風を感じられること、室外から 涼しい空気を取り込むことが重要です。つ まり、夏のパッシブ・デザインには、住宅 内にスムーズな空気の流れをつくり、暖気 を効率よく排出しながら、涼気を上手に取 り込むデザインが求められます。  住宅内の空気の流れ方は、大きく水平方 向と垂直方向に分けて考えることができま す。水平方向の空気の流れをつくるため には、風上(入り口) 側と風下(出口)側 の窓を開け放ち、風 を取り込むことが基 本です。住宅周辺の 夏の風向きを考慮し て、風の出入り口と なる窓の位置や、風 を室内に導くため のサッシュの開き方向やウィンドキャッ チャーなどを工夫します。  垂直方向の空気の流れをつくるために は、住宅の高い位置に排出部(出口)、低 い位置に導入部(入り口)をつくります。 これは温まった空気は上昇すること、また 住宅の上空は足元よりも風があることが多 いため、これに引っ張られ室内の暖気を排 出しやすいことを利用する方法で、あわせ て住宅の足元から比較的涼しい空気を取り 入れます。排出部として屋根の棟付近に腰 窓やトップライト、換気口などを導入部と して1階床付近に地窓などを配置します。  夏の暮らしの中では、この水平方向の流 れと垂直方向の流れを上手に組み合わせる ことが必要です。また、いずれにおいても、 住宅内で空気がスムーズに流れることが不 可欠ですので、できるだけ開放的な間取り としたり、室内の壁や床、建具が空気の流 れを遮らないように工夫します。 〈3〉涼しさを蓄える 「風通しをよくする」取り組みの応用編と もいえるパッシブ・デザインの一つです。 夏でも夜間や、日中日陰となる建物北側周 辺では、外気温は比較的低いものです。そ こで、このような涼しい空気を積極的に取 り込み、涼気の取り込み口付近や涼気の経 路に蓄冷部材を設置して涼しさを壁や床に 蓄えます。日中は、蓄冷した部位を通して 室内に空気を送り込むことで、涼しさを室 内に配るという仕組みです。日中、住宅中 写真4 垂直方向に空気を流し熱気を排出 する風楼(上)(事例・)、涼気を取り込む 1階の地窓(中)、室間の風通しを確保する 建具(下) 写真3 水平方向に風を通す開口部の配置 (事例・) 写真1 西日を遮るブラインド シャッターと生け垣(事例・) 写真2 バルコニーに設置した藤棚 (事例・)

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