雑誌「チルチンびと」 緑の置屋根の下省エネルギーで豊かに暮らす
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群馬県嬬恋村は、避暑地として名 高い軽井沢から車で数十分。コナラ やシラカバが生い茂る美しい町並み。 沿道には、別荘が建ち並び、都会に はない静かな時間が流れる。その一 画、ひときわうっそうとした木々に 包まれた家を訪ねた。  この家は、建築家・安田滋さんの 住まい兼アトリエ。もとは安田さん の父上が 40 年ほど前に購入した別荘 だ。安田さんは、東京・渋谷のマン ションと行き来しながら、1年の8 割ほどをここで過ごしている。8角 形の大部屋に二つの小部屋がつい た面白い形の住まいは、 〝緑の置屋 根〟と安田さんが呼ぶ、屋根を覆わ んばかりの木々で夏の日射しから守 られている。  出迎えてくれた安田さんと、次男 の嶺 れい さん。その暮らしぶりは「自 立」という言葉が相応しい。この日 は特別に1884年製、アンティー クのクッキングストーブに火を入れ てくれた。安田邸の主なエネルギー 源は薪ストーブだ。キッチンにはガ スレンジもあるが、焼く、煮る、炊 く、蒸す、日常のすべての調理をこ れで行う。ガスは給湯も含め、年間 で8キロのボンベを4.5本分程度 しか使わないと言う。また、ストー ブの上の大きな中華鍋で炒められて いる小松菜、そしてサラダボウル山 盛りのチシャ(レタスの一種)など は、どちらも近くの畑を借りて、安 田さんが育てたもの。「朝起きて農 作業をして、採れたものでご飯をつ くって。渋谷の家もいいんですけど、 こっちで過ごす1日は楽しい」と大 学で農業を学ぶ嶺さんは話す。 夏場は食べきれないほど野菜が採れる。右上から時計回りに /ダイコン。 /ジャ ガイモの花。 /食欲旺盛な毛虫。 /もうすぐ熟すトマトの実。 住まいから少し離れたところにある畑。火山地帯で、もともとは栄養分が少ない土地 だが、10 年耕しているうちに、野菜がよく育ついい土壌になってきたそう。 「日々、最高の実習です」と農業を学んでいる嶺さん。

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