雑誌「チルチンびと」 脱原発自然エネルギー時代の家づくり
4/6

といいます)、その土砂で谷部を埋めま す( 盛も り 土ど といいます)。斜面に造成され た宅地も、切土・盛土を交互に行って ひな壇状にしている場合があります(図2)。 こうした盛土の部分、あるいは切土と盛 土の境界部分は、強い揺れによって変形 したり崩壊することがあります。住宅地 で全半壊した家屋の隣が無傷ということ があるのは、こうした地盤の造成状況が 影響を与えていることも多いのです。 「プレート境界の地震」に特徴的な災害 としては、東北地方太平洋沖地震でも発 生した津波があります。マグニチュード 7後半に達する大地震が海底で発生した 時に、大きな被害が生じる危険性が高く なります。海底にある活断層が地震を起 こした際にも津波は発生しますが、プ レート境界の地震の際により顕著にみら れます。津波は、地震によって海底が隆 起することで持ち上げられた海水の塊が 海岸に押し寄せる現象です。普通の波は、 海水がその場で上下するだけですが、津 波は水塊が移動する点が大きく異なりま す(図3)。そのため、 50 センチほどの津 波でも大きな力を持っていて、十分に生 命の危険が生じます。また、津波が到達 した範囲は非常に大きな被害を受ける一 方(写真5)、到達しなかった場所は無傷 であり、0か1かという極端な被害にな るのが大きな特徴です。 「活断層による地震」に特徴的な災害は、 地表の変位です。地震による岩盤の食い 違いは地下で発生するのですが、地震の 規模が大きくなると( Mw 7が目安)地表 面まで食い違いが到達し、活断層の部分 で地表面に数 10 センチ.数メートルのズ レ(変位)が生じます。強い揺れによる 被害は耐震・免震・制震構造で回避する こともできますが、地表面にズレが生じ ると基礎が破壊されるため、強固な構造 物であっても破壊・使用不能になります。 これからの地震 日本列島の周辺には数多くのプレート 境界の地震の震源域があり、内陸には無 数の活断層が分布しています。地震の種 類や発生確率の差こそあれ、どこでも強 い地震に襲われる危険性があることを 覚悟しておかなくてはなりません(防 災科学技術研究所の「地震ハザードス テーション」 http://www.j-shis.bosai. go.jp を参考にしてください)。 なかでも、いくつか注意をしておかな ければならない地震があります。北海道 の「500年間隔地震」、西日本の「東海・ 東南海・南海三連動地震」のプレート境 界の巨大地震に加え、「首都圏直下地震」 と「東北地方太平洋沖地震に伴う誘発地 震」に注意を払う必要があります。さら に、東北地方太平洋沖地震の余震もまだ 続きます。 まず、東北地方太平洋沖地震に関連し た地震です。この文章を書いている9月 7日現在も、福島県沖、宮城県沖などで は活発に余震が発生し、小規模な津波も 起きています。 一般的に、大規模な地震の発生後には 余震が発生するのですが、その中でもっ とも大きな余震を最大余震と言います。 現時点で東北地方太平洋沖地震の最大 余震は、本震の約 30 分後に茨城県沖で発 生したM j 7・9の地震です。2004 年 12 月にインドネシア・スマトラ島沖で 発生した超巨大地震( Mw 9・3)では、 4カ月後の2005年3月に Mw 8・6の 最大余震が、また、2010年6月にも Mw 7・5の余震が発生しています。 東北地方太平洋沖地震についても、今 後マグニチュード8近い最大余震が来る 可能性を否定できませんし、数年間は、 マグニチュード7クラスの余震が繰り返 し発生することを覚悟しておく必要があ ります。 また、東北地方太平洋沖地震によって、 東日本を載せるプレートに掛かっている 力が大きく変化しました。それに伴って、 東日本の活断層の活動が活発になり、「誘 写真4 液状化によるマンホールの抜け上がり 図2 土地の造成と切土・盛土/切土の部分は安 定していますが、盛土の部分は地震の際に崩壊し やすくなります 図3 津波発生の模式図/上:プレートの境界で 地震が発生し、海底が持ち上がると、その上の海 水が持ち上げられ津波が発生し、両側に向かって 広がっていく。 下:海岸線に到達した津波は、 陸地を駆け上がっていくため、津波自体の高さよ りもずっと高い標高まで浸入していく。 写真5 南三陸町の津波被害を受けた場所

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です