雑誌「チルチンびと」 脱原発自然エネルギー時代の家づくり
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活断層による地震 プレートの境界だけでなく、プレート をつくる地盤自体が破壊されて地震を起 こすことがあります。この破壊を起こし た場所では地盤に割れ目ができます。そ して、一度、割れ目ができた場所は弱く なるので繰り返し地震を起こすことにな ります。こうした地震を繰り返して起こ す地盤の割れ目を活断層と呼んでいます (写真1)。近年起きた「活断層による地 震」で記憶に新しいものには、1995 年兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)、 2004年中越地震、2008年岩手・ 宮城内陸地震などがあります。 活断層による地震の規模は、最大でも マグニチュード8程度、大きな被害をも たらした地震でもマグニチュード6の後 半から7の前半程度が多く、プレート境 界の地震に比べ、数十分の1以下のエネ ルギーしか放出しません。しかし、人が生 活している場所のすぐ直下で発生するた め、活断層の近傍では、震度7に達する 激しい揺れに襲われることも珍しくあり ません(※※)。時に、瞬間的な揺れの強 さ(加速度)は重力の力を上回ることが あり、どんなに重たいものであっても空 中に浮き上がらせてしまうほどになるこ とを知っておく必要があります(写真2)。 日本列島の大地には複雑で強い力が常 に掛かっているため、多くの活断層が分 布しています(図1)。活断層があるとい うことは、いずれ必ずその場所で地震が 発生することを意味しています。しかし、 それぞれの活断層が地震を発生させる頻 度は千年から数万年に1度と、非常に長 い周期です。また、自然現象の発生には一 定のゆらぎがあるため、人間の一生程度 の近い将来という短い期間で発生確率を 考えることが難しくなります。さらに、 地震の規模もさほど大きくないため前兆 現象も非常に小さいかまったくなく地震 の発生を直前に予知することは不可能で す。活断層による地震に備えるには、ふ だんからの心がけがとても重要です。 (※※)震度:地震による場所ごとの揺れの大きさを 示す数値。主に加速度(瞬間的な揺れの強さ)で決 まりますが、揺れの継続時間、振幅(揺れの幅)、周 期(揺れの反復頻度)などにも影響を受けます。一 般的には震源に近いほど大きく、離れるほど小さく なりますが、地盤条件の影響で局所的に大きく変化 します。「マグニチュード○の地震」が正確な言い方 です。 地震による災害の特徴 地震による災害の特徴を見てみましょ う。「プレート境界の地震」と「活断層 による地震」で共通の災害と、それぞれ に特徴的な災害とがあります。また両方 の地震に共通して、強い揺れに起因する さまざまな災害があります。 まずは家屋・構造物の倒壊です。震度 6弱を超える揺れになると、耐震性の低 い木造家屋が倒壊し始めますし、震度6 強を超えるとRC構造であっても耐震 性が低いと倒壊する場合があります(写 真3)。揺れの強さは、地震の規模にもよ りますが、地盤条件によっても異なって きます。軟弱な地盤(沖積低地、海や湖・ 沼・ため池の埋立地、昔の河道、湿田を 宅地化したところなど)では、隣接した 地盤の良い場所に比べて震度が1.1・ 5ほど大きくなることがあります。 さらに、こうした地盤の悪いところで は、震度5弱を超えると液状化現象の被 害も生じます。液状化現象とは、地下水 で満たされた砂地の地盤が地震動によっ て流動化することで、比重の大きな構造 物が沈下・比重の小さな構造物が浮上し たり(写真4)、地中から砂混じりの水が 噴き出す噴砂現象などが生じます。 また、強い揺れは地盤災害も引き起こ します。震度6強を超えると、崖や斜面 の崩壊が始まり、震度7では大規模な地 すべりも発生します。崩れた土砂が川を 堰き止めると天然ダム(震災ダム)が形 成され、このダムが決壊すると土石流と なって下流側に大きな被害を与えます。 造成地では盛土の崩壊が生じます。土地 の造成の際には尾根の土砂を削り(切 きり 土ど 写真2 空中を飛んで台石か ら外れた鳥居 写真3 今回の東日本大震災で倒壊した木造家屋 写真1 野島断層記念館にある活断層の断面 (P.57 ~ 61 写真提供/青木賢人)

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