僕とハーブティーとの出会いは、病気から始まった。5年前になりますか。急性骨髄性白血病になったんです。歩いていると急に息が上がるようになってしまった。それまで、なったことのない中耳炎にもなり、頭痛もするようになり。おかしいなと、病院へ行ったら、そこで、血液検査。病名がわかりました。お医者さんが言うのには、何かキッカケとかはないみたいで、原因はわからない、とのこと。…… 入院しました。抗ガン剤の治療です。半年。キツかった。死んじゃうかな、と思った。白血病にいくつか型があるなかで、ぼくの型は5年生存率が、50%だという。点滴でクスリを入れる毎日でした。それが4クール。白血病の原因となる芽球というものを減らしていく。快復のスピードにあわせて治療も変わる。そして、最後に「大丈夫だね」と言われました。
「大丈夫、よくなった」と言われて、病気としてはよくなっても、体力は落ちてしまっていて、初めは、傘を杖がわりにしていました。町内を歩いたり、自転車で鍛えたり、体力を取り戻そうと運動しました。そのちょうど入院していたときのこと。姉の知り合いで食事療法などをやっている方がいて、入院中に体に毒素がたまるといけない。それを排出するハーブティーを飲むといいよ、と言われたんですね。その方にブレンドしていただいたハーブティーを飲みました。
それが、初めてのハーブティーです。飲むとおいしい。お薬みたいに飲んで、アッよくなったというのではないけど、なんか体調がいいみたいな気がしましたね。姉は美容師なんですが、退院後そんな話をしていたら、美容師はどうしても、仕事をしていて、手が荒れたりする。そうならないように、仕事をしたい。ハーブやアロマを使った美容の勉強をしたい、と言うんですね。それから、どこか教室を探してみようということになり、自分たちの勉強したいことをカスタマイズする、というところを見つけました。
その教室を選んだのは、感覚的にピッときたんです。12回コース。ぼくと姉、それと先生との2対1 。薬品を使わずに、髪をキレイにできないかと思って、勉強にきました、と姉。そうなのね、と先生。ええ、女の先生です。1回目の授業は「自分の身体」のこと。それと「植物とは」ですね。自分の身体のしくみ。植物のしくみ。自分で自分の身体のことを、どれだけわかっているか、ですね。内臓のありか、何がどこにあるかを、しっかり知っていないといけない、と。そういうことから始まって、ぼくは、紙に内臓の絵を描いたんですね。ところが、これがバラバラ。実際は肝臓と腸が重なっている。なんて言いますか、ふだんは真っ平らに並んでいるイメージだったのが、実は層になっているんですね。それをあらためて知りました。どの臓器がどこにあるかなんて、意外とわからないものですよ。
植物にしても、葉の中にこういう組織があってそれが何をしているか。その一つひとつをわかっていないといけない、ということ。…… 印象としては、ぼくは漠然と、最初からアロマの効果はこうで、ハーブの効能はこうで、という話からいくのかなと思っていたら、もっともっと手前のこと。自分の身体や植物が、どういうしくみになっているのかから、キチンと勉強。……ええ、一から勉強するってこういうことなんだな、と知りました。ちょっと ビックリもしました。授業は、2時間半。先生は、ぼくがあまりにも知らないので、笑っていた、ような気がします。ホントにあまりにも、なにも、知らなかったんです。
2回目の授業は、植物がつくりだす栄養素についてでしたね。用語解説もいろいろ。タンニンとかカテキンとか。いちばんビックリしたのは、すごい化学式がでてきて、理科の時間みたいだなあ、と思ったこと。この日の授業も、2時間半。いやあ、疲れました。
テストも毎回。小テストみたいのが、ありました。1回目の授業内容について、2回目のはじめに訊かれる、というふうにですね。ぼくも、きちんと復習するようにしていました。3回目の授業は、ハーブの歴史。やっとハーブが出てきました。今で言うと、西洋医学が日本では主流ではありますが、かつて、東洋医学はどのように存在し、進歩し、そこに西洋医学が入ってきたか。ヨモギとかスギナとか、昔から使われていたわけですね。植物から抽出したものが、治療に使われていたわけですね。それらと西洋医学の関係。4回目は、植物を知るために必要な科学の知識。元素の周期表とか、構造とか。ミネラルの勉強には、構造が必要ですし。
5回目は、ハーブの検査と管理について。そして、ハーブの粘りや苦味は、どんな物質からきているか。6回目は、ハーブの安全性について。…… まだまだ、それなふうに、自然治癒力、植物油、アロマテラピー …… いやあ、タイヘンでしたけど、知らないことがたくさんあったから、おもしろかった。さっきも言ったけど、こんなに細かく勉強するとは思いませんでしたから。ぼく自身、アロマとかハーブについて、ナメていた部分もありましたね。こんなにおもしろいものなんだと、すごく感じました。もともと理科系のことは好きでしたから、化学式なんかでてきて、ドンドンのめり込んでいきましたね。基礎の勉強が、いやになったりはしませんでした。最後の日、先生から「まだまだこの世界は、奥が深いからこれからもしっかり勉強をして、知識を深めてくださいね」と言われました。ここにあるのが、修了証です。
あ、病気ですか。いまのところ、再発もしないで、元気にしています。退院して最初の2年は1カ月に1回検診、いまも2カ月に1回検診です。血液検査をして数値をみて、大丈夫だね、と言われます。ええ、ハーブの効果も少なからずある、と思います。目に見えてわかるものではないけど、体感としては、いいですから。
修了証をもらって、さて、それからは毎日が勉強です。自分で調合して、飲んでみる。その日の体調にあわせて …… たとえば、カラダが冷えているから、暖めてみようか、というふうに。それからたとえば、知り合いの方で、パソコンを使ってシゴトをしている、というひと。眼は疲れるし、どうも寝つきがわるい、と言うんですね。カモミールとペパーミントと眼の疲れにいいというアイブライト、それにローズヒップとネトルを加え、飲みやすいブレンドに。その方から、ハーブディーはクセがあるからキライと思っていたけど、オイシかったと言われて、うれしかったですね。そのほか、いろいろな方に試飲してもらいました。
でも …… 手ごたえって、イエ、そんなにムネを張って言えるほどのことはないですが、ホメてくださる方がいますし、それより、自分のカラダの調子がイイということで、こんなにいいものを、もっとみなさんに知ってもらいたいというキモチが、強くなっていきました。それで、市とかマーケットのようなところに出てみたい、という気になったんです。つくっていて、ぼくが大事だと思うのは、飲みやすいということ。ハーブティーって、お薬みたいなイメージを持っている人。また、なんか、特別なときに飲むもの、と思っている方が、多いような気がします。でも、ぼくは、ふだん、毎日、飲んでほしい。ですから、どれだけ飲みやすくできるかというのが、ぼくの中の大事なポイント。どなたにも飲みやすい、クセのないものをつくりたいんですね。
ええ、そりゃあ、ビミョーなもので、以前、出店していて、試飲してもらったときのこと。淹れるのをいつもより少し濃いめにしたら …… それは、ハイビスカス系のハーブティーだったんですが …… みなさん、ちょっと酸味があるなあと、トマトに似たカンジがすると言って、その日の販売は芳しくなかったこと、ありましたね。
そうして、初めて外へ出たのが、千駄ヶ谷でひらかれたタウンマーケット。ドキドキしました。お客さんになにか聞かれても、話せなかったですね。話したいことの10分の1も話せなかった。これはどんなカンジのもの ? とかよく聞かれるんですよ。それと、よくお客さんが言うのは、「あ、オトコの人がやってるの ? 珍しい」ということ。フシギがられましたね。ハーブティーというと、女性のイメージが強いみたいで。お店でよく売れたのは、イライラしたときに飲んでいただく、ローズ、ラベンダー、マリーゴールドのブレンド。え? ぼくもイライラしたときには、飲みますよ。
マーケットに出るとなって、ぼくの店のイメージの絵を仲のいい友人と考えました。そのひとに、ハーブティーというとどうしても女性のイメージが強いけど、オトコのぼくがやっている、というカンジを加えてつくってほしい、と言いました。それでできたのが、この絵。もちろん、一度でOKです。同時進行で店の名前も考えました。彼女が、MAEDAYA というのが、ぼくのカンジだ、と。それで決まったんです。自分では、ハーブMAEDA とかしないといけないかな、と思っていたんですが。
マーケットのあとが、手創り市。少しは緊張も取れました。出店していたら、浅草のデパートの係りの方が来て、出品をすすめられました。ほかにも、池袋の飲食店でハーブティーをメニューに加えてもらい …… 信濃町のカフェバーでソフトドリンクとして、置いてもらい …… 西荻窪のひぐらし古具店でも、店頭販売をさせていただき …… だんだんと広がってきました。まだまだ、ですが、自分のやりたいことを、できているかが、一番大事ですからね。姉は、まさか、あなたがハーブティーにはまるとはね、と言っています。
--
netshop・instagram
[E-Mil] maedaya.tea@gmail.com
病魔に襲われ、その治療中ハーブティーを識り、退院して猛勉強。ハーブの歴史、身体のしくみ、植物のしくみ、ガッチリです。