建築家と造る木の家 設計◆横内敏人
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今回のT邸の暖炉は、戦後住宅設計の礎を築いた建築家・吉村順三式。火室は耐火レンガで煙突は鉄板というシンプルな構成だが、すべて鉄板で製作するよりも火室が蓄熱し、部屋が暖かくなる。T邸は雑木林をのぞむ開放的なつくりのため、通常の住宅地で設計するよりもやや、ゆったりとした寸法設計となっている。2501,100断熱二重煙突鉄板厚3.2㎜(耐熱塗装)ALC板厚40㎜セラミックウール耐火レンガ250シルタッチSP塗り15060写真=左2点 : 横内敏人、右 : 相原 功1,05061044057070080 住宅1軒1軒にあわせ、オリジナルの暖炉をデザインしている横内さん。上は、これまでに設計した暖炉の一部。左は、京都・若王子のアトリエの暖炉で、基礎工事のときに掘り出された石をセルフビルドで組み合わせたもので、煙突は屋根材に使われるガルバリウムの小波板。ローコストの小ぶりな暖炉だ。中央は、神奈川県に建つ山荘の暖炉。壁と一体になった山荘ならではのおおらかさと風格があり、椅子に座っていても薪をくべることができるよう、火室を通常より高く設定している。右は静岡の山荘で、四層のスキップフロアからなる空間の中央に、重厚感と野趣ある石積みの暖炉を設けている。 自身も暖炉を愛好している横内さん。「揺れる炎を見ながら、薪が燃える静かな音と香りに包まれていると、何時間も何もせずに過ごすことができます。このゆったりとした時の流れこそ、目まぐるしい現代において得難い豊かさでは」と、語る。とかく難しいと言われる暖炉の設計のコツは、「火床の奥の壁を前に傾けて、煙の出口を狭めることで煙の速度を上げてやり、その上部にスモークチャンバーという煙だまりを設けてやること。ただし、火床や火口の大きさに対するチャンバーや煙突の断面の大きさや比率は重要。米国留学時に現地で手に入れた『グラフィックスタンダード』という資料集成の数値を参考にしています」とのこと。暖炉の設計作法横内敏人=談

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