建築家と造る木の家 設計◆大野 正博
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65 敷地は、南北の間口に対して東西の奥行きが長い、いわゆる鰻の寝床。駐車場に面した北面は潔く閉じ、代わりに神社に抜ける西面の2階に、デッキと開口部をとった。1階は水まわりに個室群。玄関脇にご主人の趣味のカヤックを寝かせて収納しようとしたら、上下階の関係が複雑になった。 薪ストーブのある吹き抜けの土間をめぐるように階段を上がり、その先の2階もちょっとずつスキップ。いちばん高いところは、本来はご主人の書斎にして現・子どもたちの秘密基地だ。 「ご主人がこもれる隠れ部屋みたいなものがあるといいと思っていたんだ。けれども設計中に、ふと閃いて。ここに○△□の小窓を開けたら、絶対に子どもが喜ぶぞって」。 狙いは大当たり。不思議なことに初めて遊びに来た子でも、真っ先にこの部屋を見つけて〝おーい〟と顔を出すという。そして家の隅々まで遊び倒す子どもたちを見て、大野さんはいたずらに成功した悪ガキのようにニヤリ。「レストランでお子さまランチを食べたくなることってあるよね。大人だって、子ども心を持っている。子どもが楽しい家は、大人も楽しいんだよ」。ようこそ! 誰もが必ず顔を出したくなる不思議な窓。大人立ち入り厳禁の“ひみつきち”吹き抜け上部には、吊られたような小部屋「秘密基地」が。「遊びに来た子は、必ずここに入って“おーい”って言うよ」とMさんちのお嬢さん。台所にいるお母さんも、ここからよく見えるそう。顔を出しても落ちないよう、寸法設計には細心の注意を払った。秘密基地内部。間口1.2m×奥行き3mの極小空間。一人が入ると、つられて一人、また一人……と、いつの間にか全員が集合して秘密の会議が始まっている。

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