建築家と造る木の家 設計◆大野 正博
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63使われている。「寝っ転がる」気持ちよさもひとしおというもの。 またよいことがもう一つ。お母さんが家事をする傍ら、ひとつながりの座卓で子どもが宿題やお絵描きをする。「台所に立つ私と、座る子どもの目線がちょうど合う寸法設計。さりげないけど、大切なことだと思う」と奥さんは言う。 大野さんは、東京の下町で大家族で育った。畳で卓袱台を囲みワイワイガヤガヤ。ちょっと大きな声を出せば、話は筒抜けでプライバシーなんてない。兄貴分が幅を利かせているから寝るのは押入。けれどもどれもが温かい思い出で、空がある。デッキがある。家の一角が公園になる棚でも座卓でも階段でも、関係ない段差は飛ぶもの、登るもの台所にいれば、デッキも含め2階すべてが見通せる。子どもが何をしているか目が届くのだ。棚に登っても、お行儀が悪いなんて叱られない。「よく登れたね」とびっくりされるのが嬉しいのだ(右)。段差があると、必ず飛び降りる(左)。「いつか転んで怪我するんだろうなあ」と、苦笑しながらおおらかに笑う奥さん。鬼ごっこ、というわけでもないけれど、ただ回っているのが楽しい。「今日は子どもに占領されていますが、夏はここでプールをしたり花火を見たり。ちょっと寒い時期になっても、天気がいいとごはんを食べます(ご主人)」と大活躍のデッキ。子どもが楽しい家は、いい家だ

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