住宅雑誌「チルチンびと」73号掲載 設計 落合 雄二
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神奈川県鎌倉市の傾斜地に広が る住宅街。その一画の、ひときわ 緑の目立つ家が遠藤邸だ。 リビングに入るとまず目に飛び 込んでくるのは、雑木や山野草が 茂る、野山を思わせる庭。開放感 ある吹き抜けとそれに続くデッキ に誘われ、つい庭に出たくなる。 取材にうかがった日は雨の予報が 晴天に。「晴れるとわかっていたら、 デッキで流し素麺でもしたのに」 と、少し残念そうにご主人は笑う。 5年間のドイツ駐在を経て、帰 国後はマンション暮らしをしてい た一家。ご主人は昔ながらの旅館 育ちで、縁側の先には手入れの行 き届いた庭があった。その体験か ら、家を建てるなら自然素材、か つ庭いじりもできる暮らしを思い 描くようになったとか。緑の多い 土地を探し求めてようやく見つけ たのは、なだらかな常盤山を一望 できるこの鎌倉の高台だった。 家づくりのパートナーは、雑誌 で見て気になっていた建築家・落 合雄二さんに。奇をてらったデザ インや過度に機械設備に頼った家 は欲していなかったという夫妻は 「家と庭が自然に互いを引き立て 合っていて、住み心地がよさそう だった」とその作風を語る。 「家にいながら、外ともつながる 生活ができることが大切」と言う 庭を眺めて料理する、至福の時間 「ここで料理しながら、庭と食卓に つく家族を見ている時がいちばん 幸せ」という奥さん。最も過ごす時 間が多いというキッチンからは、四 季折々の眺めが楽しめる。 58

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