『建築家と造る木の家』チルチンびと 91号掲載
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94の照明や小窓は新居のために作家に依頼して制作。ほかにも、夫婦で訪ね歩いた海外のフリーマーケットで出会った、水道管をモチーフにした帽子掛けが飾られている。 玄関を上がって右手には、壁床を設けた8畳の和室がある。ここは寝室で、寝る場所は畳にしたいと夫妻からのリクエストがあった。「やはり日本人なんでしょうね。畳の気持ちよさからは離れられないんです。ベッドではのびのびと寝返りが打てないでしょう」と奥さんは語る。 特徴的なのは、障子を開けると小上がりになった小さな縁側越しに、作庭家が手ずから編んだ「阿弥陀垣」と庭が現れること。ここは玄関に通ずる路地にもなっている幅3・3×奥行き1・5メートルの小空間だ。「京都に行きつけの旅館があるのですが、泊まるたびに坪庭や『陰翳礼讃』に通じる美意識っていいなあと思っていました。たとえ東京の真ん中でも、ささやかでいいから庭と風、光が欲しい。敷地の大きさから難しいと思っていたら、こんな素敵な路地風の庭をつくってくれました」(奥さん)。和洋のよさを適材適所に 陰影礼讃の世界から2階に上がれば、一転、白く明るい漆喰と、現しになった梁が力強いLDKだ。住宅地ゆえに選んだ壁掛上/前ページの住宅外観写真にある鉄扉を開けてまっすぐ進むとこの路地風の庭がある。 左上/正面の障子を開けると、庭が見える。 左下/襖には、江戸からかみの老舗・東京松屋で選んだ襖紙を。ちなみに、裏側には萩と、模様の異なる襖紙を貼っている。

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