住宅雑誌「チルチンびと」84号掲載 設計 松本直子
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43地のよい場所をつくりたいですね」(松本さん)。風の道は上下にもつくり、ダイニングの吹き抜けは2階のインナーバルコニーへとつながる。北側の林の風景を取り込み、明るくなったダイニングは鳥の声が届く気持ちのよい場所になった。 工夫は床材選びにも。使用しているのはオニグルミで、Mさんも南会津の材木店・オグラへ同行し、その温かさを手で確かめて選んだ。「ほかの木も触って比べてみたのですが、まったく違いました。冬の朝でも足の裏がヒヤッとしないんですよ」。 夏も冬も過ごしやすくなった我が家。リビングでは夏は卓袱台と和箪笥で床座で過ごし、冬は北欧の椅子に入れ替え、季節感を楽しむようになったとか。「前は寒くて家の中をあまり楽しめなかったけれど、この家に住み始めて変わりました。朝は『今日もいいことがありそうだな』という気持ちで目覚め、夜は『今日もいい一日だったな』と思えるようになったんです」(息子さん)。 家中に風が通り、光が巡る。毎日繰り返されるその小さな積み重ねが、住み手を幸福にしている。上:階段のトップライト。Mさんはここからの光で毎朝自然に目覚めるそう。 下:ダイニングからインナーバルコニーの窓を見上げる。上下の風の通りを確保。ここにもトップライトを設けている。

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