住宅雑誌「チルチンびと」84号掲載 設計 松本直子
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41るのびやかな空間をつくる松本さんは魅力的だった。 できあがった家は木の質感を生かしつつ、端正につくりこまれた大人の空間に。断熱性をセルロースファイバーで確保し、それに加えて夏は南北と上下に風の流れをつくり、冬は床暖房で暖をとる。季節の変化に無理なく応じて工夫する暮らしだ。 南にリビングを設け、通りの視線は塀で遮りつつ、木製建具を引き込めば外と一体に。しつらえられているのは薪ストーブと北欧の椅子、ソファだけ。それなのに不思議と落ち着き、極上のひとときを過ごせる。静謐な時間が流れ、居心地の良さと美しいデザインが同居する。 林に面した北側には、浴室やキッチンなど水まわりとダイニングが並ぶ。建て替え前と同様の配置だが、松本さんが意識したのは風が流れる道をつくること。「関東の風は南北に通る特徴があります。ただ、北側の窓が小さいとそれができない。風を通すことは光を通すことにもつながっています。北側であっても居心選び抜いた家具を置いたリビング。物が少なくても美しいのは伝統的な日本住宅にも通じる。天井と床の木材が吸湿するとともに、風が湿気をさらっていき、いっそう爽やかに。断熱性能を底上げし、風の道をつくる

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