住宅雑誌「チルチンびと」78号掲載 設計◆松本直子
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 子どもの遊ぶ声や井戸端会議のご近所さんらの声。人びとの暮らしを感じる住宅街。入り組んだ街路に建ち並ぶ家々の間にU邸はある。 周囲の家ともなじむクリーム色の外壁にかかる屋根。そこから伸びた煙突が可愛らしい印象を与える。コンクリートを打ったカーポートにうるおいを与える坪庭。空へと伸びるシャラの木のため、一部吹き抜けた2階バルコニーはやわらかな光を導いている。 端正な玄関は、1階奥の寝室や浴室などに続く廊下のほの暗さと、階段室から坪庭に向けられた縦長の窓から入る光が交じり合う美しい場所。晴れた日の午前中には、壁にちらちらと木陰が映る。「朝は、この階段に座って庭を見ながら歯磨きするのが楽しみなんです」と、奥さん。 階段は2階リビングへと続く。畳敷きの居室には薪ストーブの火が燃える。バルコニーへと続く大きな開口部には障子も嵌められ、「和」の空間に薪ストーブという組み合わせが新鮮だ。障子を通して入る光が満ちた部屋で、薪が爆ぜる音を聞きながら、畳にごろり。心を和ませる不思議な調和。「いちばんあったかいストーブの前は、家族で取り合いですよ。妻も私も薪を燃やすのが面白くて離れ右上/コンパクトな坪庭の緑が家中をうるおす。 右下/美しい光が差し込むバルコニー。 左/リビングでくつろぐ姉弟。吹き抜け、バルコニー、開口部から感じる外の空気が心地よい。52

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