雑誌「チルチンびと」104号掲載 設計 川口通正
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O邸では、客間の床下の衣類収納や玄関周りの収納など、各所に独自の発想で設けられた収納スペースが用意されている。収納の設計にあたり、まずはOさん一家とお母さまの家にあるものすべてについて調べ、サイズを測ったという。「あるべきところにしまう場所があるのが重要なので、できるだけ細かくサイズを測り、スペースを設けることを心がけています」(川口さん)。 こうした用と美を両立させる設計手法は、外構にも生かされている。O邸では、緑を望む夫妻のリクエストに答え、玄関周りの道路境界と外壁のわずかな隙間を植栽のスペースに当てた。「街の人々と緑を共有することもできますし、シンボルツリーのしだれ桜は室内からも楽しめます」(川口さん)。「小さな緑ですが、あるとないとではまったく違います。この家に暮らすようになって、季節の移り変わりを感じるようになりました」(ご主人)。都心に暮らしながらも、落ち着いた和の意匠に囲まれ、四季を感じる…… Oさん一家の豊かな暮らしは、狭小地の住まいの可能性を教えてくれる。

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