建築家と造る木の家 設計◆加藤武志
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なるざっくりとした風合いだ。「設計しながら考えるのは、どれだけ住み手らしさを表現できるかということ。地場の山さん武ぶ杉を使った外壁に塗装した瞬間、家が昔からあったかのような佇まいになり、素朴なお二人にぴったりだなと」(加藤さん)。命が巡る          小さな農の世界子どもの頃から生き物が好きだったご主人。竣工後に鶏も飼いはじめ、家づくりの端材で小屋をこしらえた。鶏は卵をいただくほか、野菜くずを餌として与えたり、鶏糞を発酵させて畑の堆肥にしたりと日々の食卓を支え無駄が出ない。鶏だけでなく、ハチやカエルは野菜についた芋虫を、水鉢に棲むメダカやヤゴはボウフラを食べてくれる大事な仲間だ。「部屋にいても外を見ていたら毎日楽しくて。春はメジロやシジュウカラ、秋はアカハラがやってくる。庭でハンモックでくつろいでいると、鳥が自分の存在に気付かず枝づたいに歩いていることも。自分も庭の一部になったようで嬉しいですね」(ご主人)。生き物の力を借り、小さな農の世界が巡るSさんの庭だった。右/リビング。奥の書斎コーナーは鶏小屋を見るベストポジション。 左/書斎コーナーからリビングを見る。テーブルを掘り炬燵式にしなかったことで、一つの床でつながるのびやかさが生まれた。

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