建築家と造る木の家 設計◆加藤武志
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 爽涼な風が吹き抜け、緑が深まる夏の1日。日差しを浴びて生長したキュウリをかじり、「うちの野菜の味だね」と夫婦でにっこり――。 とある緑豊かな住宅街にあるSさんの家。ぐるりと巡らせたマキの生け垣の奥、深い森の中に埋もれるように素朴な平屋が覗く。三角形に近い敷地の中、北側に平屋が佇み、開放的な南側に小さな菜園が四つ。東側は鶏小屋とソヨゴやヒメシャラが育つ雑木の庭になっている。「初めは雑木林の庭を、と思っていたのですが、苗や種を見るとどんどん植えたくなって。気づけば50種類。芝生を庭中に張る作業に飽きてしまったこともあり、自然と畑が増えていきましたね(笑)」と夫妻。日々の勤めのかたわら、既存の2本の樹木以外はすべて好みのものを選び、自分たちの手を動かしてせっせとここまでつくりあげた。今では腐葉土や堆肥も自分たちでこしらえているこだわりようだ。「土壌が粘土質なので雨の後に硬くなりやすい性質が。土の改良から地道に進めてここまできました」(ご主人)。

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