建築家と造る木の家 設計◆加藤武志
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48コンパクトでも広がりのある集い2階(子世帯)の面積は48㎡。コンパクトさを居心地の良さに変え、人が集まりたくなる家になったO邸。その特徴を探ります。図・鈴木 聡(TRON/OFFice)2F専用の植栽コーナーを設けて2階でも緑を楽しめる(詳しくは63ページ)。隣家の目線を切るため、道路側に壁を設けたものの、壁と一体化した花壇があるので圧迫感がない。造り付けのベンチは落ち着いて緑を楽しめる場所に。1階に住む母世帯が孫の様子を見にふだんから遊びに来るので、ダイニングテーブルは4人家族にしては大き目のものをつくった。階段下は引き出し式の収納で省スペースに。コンロとシンクが並ぶ、シンプルで使い易いI型のキッチン。長さは2.4mが一般的だが、人と並んでも調理できる2.8mにした。「楽屋」のように、着替えをしたり荷物を置いたりできる寝室。 気のおけない団らんの要はデッキ。リビングと隣りあい、日々、子どもたちの遊び場になるほか、大勢が遊びにきたときにも重宝。ダイニングのベンチは詰めれば多く座れ、柔軟に人数の変化に対応する。配膳のやりとりに便利な対面式のキッチンは、壁側の収納の上でも作業ができ、皆で調理することもできる。“逃げ”の空間を活用しているのも特徴の一つ。お客さんが到着したら、まず荷物を寝室へ。戸を開けておけば様子が伝わるので、ここが子どもたちの遊び場にもなる。そして2世帯住宅でも完全分離型(79ページ参照)で、母世帯に気兼ねなく友人を招待できることも集まりやすさを生み出している。室内全体のまとまり感と、室内・デッキ・ロフトなど“逃げ”られる場所のバランス―これらが窮屈さを感じさせない居心地の良さにつながっている。家中の様子がわかる対面式キッチン。カウンターの高さは手元が隠れるようにした。キッチンのバックヤードとしてのデッキ。ゴミを出しておけたりと、小さくても重宝。リビングの動線には関与しないと考え、デッキ間で行き来しないつくりに。造り付けのベンチ。肘掛けがない分、多く座れる。寝室ベンチの後ろを出窓にしたのは、子どもの安全と冷気対策のため。座ったときに窮屈さを感じない効果も。キッチンリビング・ダイニング階段と廊下の間の壁は薄くして、廊下の有効幅をできるだけとった。

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