建築家と造る木の家 設計◆加藤武志
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資料請求番号8803会が増えた。集まりたくても、子どもも大人も一緒にリラックスできる店が少ないことに気付いたからだ。それなら「うちにこない?」と、友人を自宅に招くようになり、今では「Oさんの家が、私たちにとってのカフェみたい(笑)」と皆から言われるまでに。「年が違う子と遊べるから、子ども同士でも大きい子・小さい子の関係ができて兄弟姉妹のように」と、保育園や幼稚園とも違う良さがある。 集いの時間は、皆で集まっておしゃべりや子育て情報の交換をするだけではない。離乳食など子どものための料理教室のほか、味噌づくり、ヨガ、クラフトづくりなど、やりたいイベントをそれぞれが提案する日も。「子どもと遊ぶこと」と「自分たちの趣味を充実させること」が両立できるのも、家に集う醍醐味なのだ。「もともと、人が集まる家にしたかったんです。ただ設計当初は集まるのは親戚が中心になると想定していて、ここまで友人たちを招くようになるとは考えていなかった」とOさん。敷地は間口が狭く奥行きが長い、いわゆる鰻の寝床。実は二世帯住宅になっており、1階はご主人のお母さん世帯、2階とロフト階がOさん家族の住まいだ。 設計を手がけたのは建築家の加藤武志さん。「集まりたい、というリクエストをコンパクトな土地の中でどう実現するか。お料理もお好きなので、高密度にLDKをつくりこみつつ、デッキや寝室など、集いのときに〝逃げ〟になる空間の流れも大切にしました」(加藤さん)。ダイニングテーブルにはベンチを造り付け、手持ちの椅子も活用すれば、ゆうに8人で囲むことができる。リビングとつかず離れずの距離を保つデッキや寝室のおかげで、長く過ごしても気づまりしない。とりわけデッキはベンチやパーゴラをしつらえ、青空の下のリビングのようで、子どもに大人気だ。「母親になる前から今日のみんなとは仲がよかったけれど、子どもを通して付き合いが深まった感じがします。集まる場所が家でなければ、こんなに仲良くなれなかったかもしれませんね」と、Oさん。二世帯住宅の中で家カフェを楽しみ、日々の暮らしを大切にしながらも、仲間と自分たちらしく集まる―人との関係を結びなおす、さりげないエッセンスが詰まったOさんの家だった。左/外観。1階が母世帯。駐車スペースのためにデッキは柱を建てず浮かせた恰好に。 右/デッキはほどよく囲われているので、外なのに部屋の中にいるような気分に。

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