住宅雑誌「チルチンびと」74号掲載 設計 加藤 武志
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 鋳鉄製の鍋の蓋を開けると立ち のぼる湯気。美味しそうな香りを 漂わせる料理は、カスレというフ ランスの豆料理だそう。ウッドデ ッキのテーブルには、ほかにも香 草のサラダや、デッキで日干しし てから漬け込んだというピクルス が彩りを添える。  東京都武蔵野市にあるI邸。休 日のこの日は、奥さんのお母さん とお姉さん一家が集まり、にぎや かなランチが始まっていた。2階 にあるリビング・ダイニングは、 南側が全面ガラス窓になっていて 明るく、屋外の大きなデッキが見 通せる。デッキの手すりの向こう には庭木の緑が頭を覗かせ、まる で山中の別荘にいるような気分。 さらに、窓の前に置かれた存在感 ある薪ストーブもここが吉祥寺の 住宅街であることを忘れさせる。  薪ストーブは、奥さんのたって の願い。「小さい頃から火が好き なんです。ガール・スカウトのキ ャンプで火を熾し、マシュマロを 焼いたり、囲んで皆で歌ったり」。 また、学生時代にはワンゲル部に 属し、自然の中でキャンプファイ ヤーを楽しんできたそう。そして、 同じくアウトドアが好きだという ご主人の思い出にもロマンティッ クに火影はゆらめく。「アメリカ に住んでいた頃、メーン州の誰も 燃える炎の向こう、 リビングが空に伸びていく 34

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