住宅雑誌「チルチンびと」65号掲載 設計 泉 幸甫
6/8

司さんがはまっている、フライフィッシングの材料だ。かと思えば新幹線通勤の合間を縫って、敷地内のカラマツを伐り出し、ストーブ用の薪小屋づくりと「会社に行く暇もない(笑)」ほど忙しいのだとか。「休日のほうが早起きしています」と、今の暮らしを心から楽しんでいるようだ。  一方、リビングから廊下を隔てた東側には、淳子さんの工房がある。上塗り時に塵や埃が入らないようにガラス戸で部屋を仕切る、窓には作品の日焼けを防ぐために木の引戸をつけるなど、細やかな工夫が施されている。工房の隣にある木工室には、大きな轆轤、チェーンソーなど迫力のある工具が並ぶ。ここで繊細な中にも力強さのある作品が生まれる。 写真説明 漆の作業場。適度な湿気のあるこの土地の気候も、漆芸に適しているのだそう。 右/クジラの髭でできたヘラ、人の毛を使った刷毛など昔ながらの繊細な道具で作業を行う。右奥にあるのは不純物を取り除くために漆をこす道具。 中央/生漆、黒と朱の染料を混ぜたもの。埃が入らないように棚の中で保管する。 左/赤と黒のお椀、凸凹のある質感が印象的な角皿。日常使いもできる、素朴さと洗練を兼ね備えた淳子さんの作品。

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る