住宅雑誌「チルチンびと」65号掲載 設計 泉 幸甫
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開口部には、あまりにも和風になるのは避けたいという夫婦の意向を汲んだ、大きな割の堅組障子が施されている。大胆な組子が新鮮で、モダンなデザインだ。  広々とした杉の床は、泉さんのすすめで淳子さん自らマットな質感の黒漆を塗った。窓から差し込む昼間の強い日差しは、楮100%の上質な障子紙を通ると品の良い光に変わり、漆の床に吸収されて、部屋全体がやわらかい印象になる。そして、長男・櫂君対策として夫婦が考えたのが、障子の組子の間に発泡系断熱材をはめ込むというもの。取り外しもできる。さすが作家夫婦、と泉さんも感心しきりの工夫だ。  この家のもう一つの特徴は、泉さんが事前に夫婦の住まいと工房を訪れ、観察してつくりあげた趣味と仕事のスペース。階段の下には、多趣味な健司さんのための隠れ家的空間がある。造り付けの専用棚に納められた、何十種類もの美しい羽根入りの瓶が目を引き付ける。映像ディレクターという枠を超え、自分でつくった人形や木のおもちゃでアニメーションの制作も行うほど凝り性の健

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