九谷焼
九谷焼の発祥はおよそ360年前のこと。九谷村(加賀市山中温泉九谷町)に陶石鉱床が発見されたことにより、大聖寺藩初代藩主前田利治が家臣の後藤才次郎らに命じ、すでに磁器の産地として名高い肥前(佐賀県)で酒井田柿右衛門によって完成された赤絵の技術を習得し、有田の工人を連れ帰って九谷に窯を築き、加賀の工人田村権左右衛門らを指導して色絵磁器の製造がはじまりました。この時期のものは「古九谷」と呼ばれ、紺青・紫・黄・緑・赤の五彩を使って山水や花鳥、幾何学模様が描かれた当時としてはかなり斬新なもの。なかでも特徴的なのは黄と緑を多用した「青手」です。窯は50年続いたのち忽然と姿を消しますが1807年に加賀藩により再興され、その後次々と窯が開かれ、古九谷の流れを組みながらも互いに切磋琢磨し多様性に満ちた作風が生まれ、現在に至っています。
工房あめつちの中川豪さん、美保さんご夫婦は、石川県立九谷焼技術研修所で3年間学び、それぞれ作家さんの工房や陶房で修行をしたのち、2006年に独立。現在は九谷焼の産地として知られる能美市寺井町で工房兼ショップを開いています。ろくろ担当の豪さんは東京都出身。焼き物をしたいと産地をさがして巡り合った九谷が自分にしっくりと馴染んだといいます。絵付け担当の美保さんは石川県出身。短大時代に出会った陶芸の先生から「住んでいる場所も技術のうち」と言われ「ひとつプラスだな」と思ったそうです。古い九谷焼の雰囲気を残しつつも、ヘラではなく指で行うため、揺らぎ感がありあたたかみを感じる独特の成型と、染付と上絵付けを組み合わせた立体感のある文様など、遊び心たっぷりの器にはとことん作品づくりを楽しむ心が溢れ、おおらかさと細やかさを併せ持つお二人の雰囲気そのもの。手に取るだけで器の楽しみ方を教えてくれるようです。
色絵鳥図三弁花小鉢 Φ13㎝ 価格:4,000円
工房あめつち
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