胡粉
胡粉は、牡蠣や蛤、帆立などの貝殻をすり潰してつくる白い顔料で、古くは奈良時代の伎楽面のものが発見されています。その柔らかく気品のある白(びゃく)の色合いは日本画や人形、能面、神社仏閣の壁画などの伝統美術工芸に欠かせないものとして、また壁の塗料、化粧品や食品にも使われてきました。宝暦元年(1751年)創業の上羽絵惣株式会社は、胡粉の他にも岩絵具や本朱、顔彩、膠など日本の美を支える良質な絵具を作り続けています。商品開発部の稲土舞夕子さんが、工場を案内してくださいました。
胡粉づくりの工程は、貝殻を10年ほど雨風にさらし風化させるところからはじまります。それから身のついていた白い方と蓋側とに分け、研磨、洗浄して不純物を取り除き、天日干しして粉砕したものを水と練り合わせて撹拌し、沈殿物を杉板に均一に流して天日に干します。板状になった胡粉を剥がして粉末にするか、または板のまま梱包して出来上がりとなります。最後まで手作業なしでは出来ない手間暇かかるもの。材料や粒の大きさによって同じ白でも10数種類にも品質が分かれ、それぞれに飛切、白鳳印、寿印など、と特徴的な名前が付いています。
日本画の人口が減りつつある昨今、こちらでは胡粉の美しさと質の良さを知ってもらおうと、天然素材の心地良さと優しさを生かしたネイルや石鹸など新しい商品も作っています。とくに「胡粉ネイル」は独特のきつい匂いがなく、爪へのダメージも少なく、ふっくらとした厚みと透明感があり、消毒用のアルコールで落とすことができます。また「白光(びゃっこう)」「艶紅(つやべに)」「藍(あい)」など美しい和の色も話題を呼び、幅広い年齢層の女性に人気が広がっています。身近なアイテムを通して日本の伝統色の魅力を広く伝え、日本の美術工芸への関心がより高まるように、また絵具専門店としての伝統技術を後世に残したいという想いを込めて、新たな色への挑戦が続きます。
飛切胡粉 2,000円 150g
胡粉ネイル「白光(びゃっこう)」 1,300円(税込)10ml
上羽絵惣株式会社
〒600-8401京都市下京区東洞院通高辻下ル燈籠町579
TEL:075-351-0693
営業:9:00~17:00
店休日:土,日,祝日
HP:https://www.gofun-nail.com/