唐紙
中国の唐から奈良時代に伝わった唐紙は、平安時代に襖紙・料紙として上流貴族の雅な文化を支え、江戸時代になると町人文化にも浸透し、以来、数百年変わらぬ印刷技術で人々の暮らしに彩りを添えてきました。
唐紙は、まず雲母(きら)、胡粉、顔料を調合した絵具を刷毛で篩(ふるい)に伸ばし、手彫りの木版の上に均等にのせます(※)。それから木版に和紙をのせ、手で優しく撫でるように文様を摺ります。最後に紙をはがすときに生まれる陰影にいたるまで、細やかな手仕事の風合いを感じられます。
西陣織で栄え、いまも職人文化が色濃く残る古い街並みにひっそりと佇む「かみ添」では、古来の手法を守りながら、現在の暮らしに寄り添う新しい文様を生み出しています。例えば水玉の襖紙。見る角度や、日差しや灯りなど光のあたり方によって微妙に変化する柔らかな水玉模様は、和室にも洋室にも違和感なく溶け込みます。
「紙はそれひとつで成り立つものというよりも、襖紙や障子、便箋など暮らしに“添う”、気持ちを“添える”もの。だから“かみ添”と名をつけました。歴史文化に詳しい京都のお客様にいろいろなことを教わりながら、そういう目の肥えた方々に恥ずかしくないように自分たちも勉強を続けていきます」と語る店主の嘉戸浩さん、みさえさんご夫婦。小さな街の工房から、唐紙の豊かさ、楽しさ、美しさを静かに発信し続けています。
※[雲母]花崗岩の中の薄片状の結晶を粉末にしたもの。
[胡粉]カキやアサリなどの貝殻を乾燥させ粉砕したもの。
[篩]木の薄板を丸めたものに布を張った、木版に絵具を付けるための道具。
[木版]唐紙に適した柔らかい朴の木を用いる。
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