足袋
花街として知られる東京・向島。1867(慶応3)年創業の「向島めうがや」は、芸者さんを始め、踊り、お茶、能楽など、着物を着る人びとを支え続ける足袋の専門店です。店内にはミシンが3台置かれ、小上がりの奥には裁断台。正面の小さな陳列棚に足袋が並ぶものの、店というより、仕事場という雰囲気です。
手づくりの既製品も揃えていますが、現在この店の主力は誂えの足袋。まずは足の全長、幅、足首回りなど20近い項目のサイズを測ります。そこから起こす型紙は片足につき、親指側・4本指側・底の3枚で1セット。左右それぞれに用意します。型紙を載せた生地を、先が丸い、専用の「丸包丁」でくりぬくように裁断し、ミシンで縫製。完成した足袋は、縫い目が表からは見えませんが、途中工程を見ると、驚くほど細かいひだを寄せて縫うことで、平たい生地を、曲線を描く立体的な形につくりあげていることがわかります。
「お客さまの足に、きれいにぴったり、吸い付くように仕上げていくってことです」と話すのは、五代目の石井芳和さん。履き心地も、長持ちするかどうかも、できあがった形の美しさに表れるという足袋。だからこそ、お客さまに「かっこいいね」のひとことをもらうと、苦労も疲れもどこかにいってしまうとか。
「足袋は毎日こつこつと完成させていくもの。一人前になるためには一生でも足らなくて、二生分くらいやらなくちゃならないんですよ」と、石井さんは笑顔を見せました。
白キャラコ足袋 3,360円〜
向島めうがや
〒131-0033 東京都墨田区向島5-27-16
TEL:03-3626-1413