江戸風鈴
軒先に吊るされた風鈴。風に揺られて鳴るその音は、暑さの中にひとときの涼しさをもたらしてくれます。
このガラスの風鈴は、江戸時代から、江戸でつくられていた歴史にちなみ「江戸風鈴」と呼ばれます。名付け親は東京都江戸川区の篠原儀治さん(82歳)。今も現役で活躍するガラス風鈴づくりの第一人者です。
江戸風鈴の大きな特徴は、その口の部分。触れても危なくない程度にぎざぎざに仕上げられています。これこそが音色の要。振り管がぎざぎざの一つの山に触れるだけで音が鳴る仕組みなのです。風に揺れる振り管が連続して口に触れることで、より長く音が続きます。ガラス製の場合、単に振り管が風鈴にあたるだけでは音の余韻は短いため、それを補う工夫として考えられました。
ところで「夏の風物詩」と思われがちな風鈴ですが、古き時代の人びとは、“音で災いを防ぐ”という意味を込めて、季節を問わず風鈴を吊るしていました。伝統的な風鈴には魔よけを意味する朱色が塗られ、「宝船を松(待つ)」といった縁起のいい絵柄が描かれているのも、そんな由来から。「魔よけをしながら福も呼びたい。人間はよくばりですね」と篠原さんは笑います。
そんな伝統の柄や、金魚や花火などの定番柄、篠原さんが「入道雲」と表現する雲形のユニークな形など、工房にはさまざまな風鈴が並びます。自由な発想と、先代からの技を受け継ぎ守るその手から、今日も新しい風鈴が生みだされています。
〒133-0065 東京都江戸川区南篠崎町4-22-5
☎03-3670-2512
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