箸置き
ほんのり色づいた陶器の桜の花びらが5枚。小箱の中、花の形におさめられたこの箸置きは、千鳥ヶ淵に代表される桜の名所、東京・九段の「暮らしのうつわ 花田」に置かれています。約35年前に松井信義さん(66歳)が開いたこの店では、ふだん使いの和食器を、各地の作家とやりとりを重ねながら、つくりだしています。
この作品は約30年前、店から「春らしい箸置きを」という提案を受けた、栃木県の茂木(もて ぎ)町の陶器作家・小川博久さんの手によって生まれました。小川さんは現在63歳。奥さまの千栄子さんとの共同作業で、この作品をつくり続けています。
「箸枕」とも、「箸台」とも呼ばれる箸置きは、その名の通り、食事の合間に箸を休ませるための小さな道具。食卓を演出するわき役です。「そのためには、凝りすぎず、あくまでもシンプルに」と小川さん。箸置きに限らず器についても、長く使い続けられる「実用品」としてのものづくりを、いつも心に置いているそうです。
そんな想いと桜の色がうまく調和したこの箸置き、ピンクの顔料でうすく色付けた素地の上に、白く濁った釉薬をかけ、焼いて仕上げた淡い色は桜の花弁そのもの。白に近いその色に、ピンクの濃淡がかすかに浮かびます。
春を呼び、心を和ませてくれる箸置き。器の傍らに置かれたその姿は、食の時間をゆったりと愉しみながら、季節を味わうことも、静かにすすめているようです。
暮らしのうつわ 花田
〒102-0074 東京都千代田区九段南2−2−5
TEL :03-3262-0669
H P :http://www.utsuwa-hanada.jp/
営業:午前10時30分~午後7時 (祭日は午前11時~午後6時30分) 日曜定休(祭日は営業)
風窯(小川博久・小川千栄子) http://www.geocities.jp/kazegama/index.html