金継ぎのくらわんか茶碗
「金継ぎの器を揃えている骨董屋さんを知りませんか?」
京都西陣の町でそう訊ね、教えられたのが「こっとう 画餠洞(わひんどう)」。北野天満宮からほど近く、町家を改装した小さな骨董店を営むのは、服部元昭さんと朝日久恵さん、意外なほど若い二人です。
水屋笥からぞろっと出された金継ぎの器はすべて、蒔絵師から手ほどきを受けた服部さんが繕いました。「欠けた縁を直す程度なら『景色』の一部ですし、傷をわかるように直すならデザイン」と服部さん。写真のくらわんか茶碗は後者です。
まず、膠(にかわ)などで割れをつなぎ、漆、砥の粉(とのこ)、水を混ぜた、いわば漆の粘土「錆び漆」で欠損部分を補います。室(むろ)で錆び漆を固化させ(※漆が固化するには適度な湿度が必要)、細かな砥石でていねいに研磨して極力フラットに。そこに金の発色を促す赤漆を何度も塗り、真綿で金の粉を蒔きます。さらに、漆でコーティングしては研磨すること数回。1工程ごとに室に出し入れし、およそ3カ月は要する、気長で緻密な作業です。
金継ぎは口当たりがやわらかく、自然素材ゆえに無害。しかし、漬け置き洗いはしない、持ち方に気を配るといった、「傷をいたわる心」が必要です。一説には、江戸時代に淀川を行く船の上で庶民に使われたというくらわんか。こんなに丹念に繕われていると知ったら、古(いにしえ)の人はどんな顔をするでしょうか。
こっとう 画餠洞(わひんどう)
〒602-8326 京都府京都市上京区今出川通六軒町西入西上善寺町190-16
☎ 075-467-4400
営業時間11時~19時 年中無休(臨時休業あり)※営業時間、営業日は、仕入れ等の都合により変更になる場合がございます。事前にお電話等でご確認いただけると幸いです。
※手数料と材料費とを見積もり、持ちこみの器も金継ぎしてくれる。なお、写真のくらわんか茶碗は売却済み。