徳島県編 その五

 いつも旅先ではいろいろなお店をお訪ねするのが常です。徳島にも個性的なお店がたくさんあります。

 まずご紹介するのは CORNER STORE(コーナーズストア)。2012 年にウエブストアをオープン、2014 年にオープンさせたショップでは質の良い雑貨や椅子、テーブルなどの家具、キッチンアイテムや器や食品、照明器具など生活に関連する時代性をとらえたものを扱 っています。こまめに国内外から仕入れ、ブログなどで紹介しています。ショップでは小売りのほかに、作家の作品の展示販売や、マーケットへの出店も積極的に行っています。

CORNER STORECORNER STORE

 「遠近」と書いて「をちこち」と読ませる、大きな倉庫を改装した店舗。中に入るとまず目に付くのが徳島の藍染めの和紙を全面に貼った間仕切り壁。自分たちで作業したものだとお聞きしました。取り扱っている作家の焼き物は民芸の流れを汲むものが多く、造形力の高いものばかり。また阿波藍や会津木綿の作家の作品を企画販売するなど、作家同士のネットワークも強固にお持ちのようです。喫茶ではオリジナルのプリンアラモードが作家のお皿でサ ーブされ、とても人気のようです。

遠近遠近

 そして人づてに聞いた、「nagaya.」(ナガヤ) という雑貨と喫茶のお店をお訪ねしました。 50 年ほど前の高度経済成長時代に建てられた長屋。昔懐かしい錆びたトタンで囲まれた文字通り長屋を改修したショップです。もともとの佇まいを生かして改装し、日常使いの生活雑貨やガラスなどが並んでいます。店内は昔懐かしい硝子の窓やしつらえがさりげなく調和し、趣味の良さが伺えます。「nagaya.」を皮切りに、図書館、本屋、皮作家の工房、ネイルと集う場、花屋さん、フリーウェデリングプランナーが次々とオープンし、昔の長屋のように皆で共同し助け合いながら企画を行う「ナガヤプロジェクト」が立ち上がっています。徳島とその周辺の作家さんたちとの催しも盛んにされています。

 旅を通じていつも驚くことは、街中から離れた辺鄙なところに、または住宅街の一角に、そして山奥に店舗があっても機能していることです。自然の豊かな広大な敷地の空き家や、街中の使われなくなった古びた倉庫、空きビルを利用し、SNS で発信し集客しています。そしてそれぞれの地方の産業を新しくデザインし、プランニングし、インターネットで販売もします。自分たちの街を自分たちが誇りに思い、「ありきたりではない」個性的な徳島の魅力をそれぞれが発信し、暮らしを豊かにしています。

 徳島といえば阿波踊りが気になるのです。お盆の時期に毎年 12 万人が訪れる日本を代表する踊り。あのピタっとそろったみなさんの踊りは神業的。高く上げた腕がしなやかで、あのお囃子が聞こえてきたら、さぞ徳島県民の血が騒ぐのでは。その記憶は必ず遺伝子に残るに違いありません。旅のコラムの連載が終わるまでには一度是非訪れてみたい、できれば踊 ってみたいと切に願うのでした。