福島県編 その四

初めての福島、初めての会津。初めての人たち、家、暮らし、仕事。今回の訪問は会津電力株式会社を立ち上げた、佐藤彌右衛門(さとう・やえもん)さん。2011年3月11日、あの震災、東京電力福島第一原子力発電所の事故が起きました。甚大な被害は、私たちにエネルギー供給の在り方を考えなくては、という課題を突き付けました。
佐藤さんは「福島以外の場所のために我々が原発を引き受けてこんな被害に合ってしまった。この不条理は許しがたい。しかし国や東電を非難するだけでなく、原発を見過ごしてきた責任もある。私は、太陽光、小水力、木質バイオマス、地熱、風力等の再生可能なエネルギーを、他地域から運び込むことなく、まず私たち自身で作り出そう」と、太陽光を利用した発電所を作る、という事業に取り組みはじめました。2013年8月のことです。
地元自治体7町村、金融機関、個人の出資を得て、発電所の建設を続け2018年には、全70か所、実に1500世帯分の電力を供給することになり、現在も発電拠点は広がっています。

会津電力株式会社会津電力株式会社

喜多方市熊倉町にある雄国太陽光発電所に案内していただきました。会津電力株式会社第一期事業として建設された、会津地域初のメガソーラー発電所。270Wのソーラーパネルが小高い丘の中腹に3740枚並ぶ様は圧巻です。その脇にある木造りの建物は、地域住民や子供達が再生可能エネルギー普及のための学習を行う場所。いままで1000人を超える人たちがここを訪れ、太陽光発電所の見学や、映像や実験キットを使って自然エネルギーについて学んできました。

大和川酒造大和川酒造大和川酒造

会津で寛政二年(1790年)創業の造り酒屋「大和川酒造」は2018年が228年目となり佐藤さんが9代目。名酒を作り続けるとともに喜多方の地域貢献のため代々尽力してきた家系です。「美しい自然と、おいしい水、米作りにいそしむ人々、もともとこの福島は天からの恵みに満たされていた場所」その大地を自分たちの手で取り戻すため、佐藤さんの探求は続きます。
馬刺しの美味しいごひいきの居酒屋さんに電話を一本入れてくださり満員の店舗に無理を言って予約してくださったこと、誰も住む人がいなくなった蔵のある美しい民家を案内してくださったこと、次の日の朝喜多方ラーメンのおすすめ店にお車で案内してくださるなど、佐藤さんはよそ者の私たちに温かいおもてなしをしてくださいました。彼らの戦いのために何の力にもなれない、とつくづく恥じ入る気持ちになり、何かせめてできないか、とコラムを書いているのですが、私の非力を補うことにはならないでしょう。せめて、心の中で応援し続ける、私でいたい、そう思います。