福島県編 その三

食堂つきとおひさま」のオーナー五十嵐加奈子さんは福島県会津の北塩原村出身。上京後都内でカフェの店長をしていたあるとき、「会津のいいもの」を紹介している小冊子「oraho」に出会うのです。編集長である山本晶子さんにお会いし、地元会津の良い場所、おいしいもの、手仕事について色々知っていくことになりました。こんなにも宝物にあふれる会津に戻りたい。そこで自分たちの食堂をやりたい、と考えるようになりました。それからの行動は素早く、東京で知り合ったご主人と物件探しに会津へ。喜多方で出会ったのが古いお豆腐屋さんだった築70年の古民家。町で人気のおいしいお豆腐作りをしてきた歴史が刻まれた家に一目惚れし、移住を決意。いざ東京から移動という矢先、あの震災が起こりました。荷物運送のトラックもキャンセルとなり、「いまから行くのは無謀」、と両親や友人たちに反対もされました。しかし五十嵐さんは「こんなことがあったからこそ地元のためにできることがあるはず」と3月中に移住。以来開店のために日々奮闘するのです。東京の友達が壁やペンキを塗ってくれ、水道屋さんであるお父様が水回りを全部直してくれ、会津漆器の器、会津木綿のコースターなど地元のもので店内の備品を揃えました。そして一年がかりで2012年4月に開店することができたのです。

食堂つきとおひさま食堂つきとおひさま食堂つきとおひさま

オープン前プレイベントの「会津・漆の芸術祭」をかわきりに、地元のアートや工芸の展覧会、古本市、お菓子作りのワークショップなど企画は盛りだくさん。地元の作り手の工房を巡ってものを仕入れ、お店のショップコーナーにはわたなべ木工の木のクラフト、平出油屋の菜種油や胡麻油、会津木綿の文具など、地元のお土産が並んでいます。お店のメニューは家族が畑で作ってくれたふんだんの季節の野菜を使ったおもてなしの料理。オープンして6年。なにか企画するとたくさんの人が訪れてくれる人気店となりました。

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店名の「食堂つきとおひさま」には、「ふたつの風景は違ってもお互いが大切。上を向いてゆっくり進み、夢を見て、行く道を照らす。ぽっかりつきときらきらおひさま。そんなふうになりたいな」(ブログより)という思いが込められています。はちきれんばかりの笑顔の奥に地元愛と人間愛があふれ、たくさんの人が出会い縁で結ばれる、「心に残る良き思い出がつくれる場所に」それが五十嵐さんの願いなのです。