石川県編 その二

1998年にリストランテ ラ・ヴィータはオープンしました。オーナーシェフの中森真吾さんは、金沢市香林坊生まれ。10歳の時に亡くなった父が寿司職人だったため、同じ道に進みたいと大学を退学。左利きだったので父と同じ和食の修業はあきらめ、洋食の道へと上京。いくつかフレンチレストランのドアを叩き、ことごとく断られたそう。ひとつだけ拾ってくれたのが、飯倉片町にあるイタリアンの老舗「キャンティ」でした。

リストランテ ラ・ヴィータリストランテ ラ・ヴィータリストランテ ラ・ヴィータ

「まずホールでお運びさんからはじめました。早く厨房に入りたかった」
務めて1年後、厨房に昇格。まずは従業員のまかない食から作ることになりました。
両親共働きで家庭の味を知らずに育ったため、まかない食のイメージが沸かず、シェフ達にバカにされ辛い思いも。「でもあの時代があったからこそ今まで頑張ることができたのです」と中森シェフ。辛さに耐え、5年をキャンティで過ごした後、さらに研鑽を積むためにイタリアはトスカーナ地方のルッカに料理修業に出かけました。その時に取り続けたレシピのメモが中森さんの生涯の宝となったのです。2年のイタリア留学時代に、東京でレストランを開く予定の日本人経営者にスカウトされ帰国。六本木で本格的なイタリアンレストランの立ち上げに携わりました。自分の店を持ったのはその6年後。アルバイトしながら念願の出店になりました。もちろんあの時のノートのレシピはそのまま生かされています。開業して今年で20周年。金沢のイタリアンの老舗になりました。厳選された加賀や能登の旬の地元食材と自ら手掛けた有機栽培の野菜、香り豊かな本格的な料理を提供しています。店内はしっとりと大人の雰囲気を漂わせ、「何を注文しても美味しい」と長年通ってくださる常連客であふれています。

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「心を込めて作ること、お客様の喜ぶお顔が見たいから。そしてそのために毎日試行錯誤しています。身体はきついですがこの道しかないから」と見せてくれた笑顔は素敵でした。