福井県編 その一

三重県の旅の余韻がまだ残っています。旅に出るときはいつも心身共にニュートラルであろうという気持ちで出かけます。新しいことに素直に共鳴できるようにと願ってのことです。今度は北陸の祈りの場所が集まっている福井県の旅へ。石川県金沢市から加賀市を通って、県境の吉崎からご紹介します。金沢市から車で1時間の吉崎御坊吉崎は蓮如上人(室町時代の浄土真宗の僧)が滞在した場所です。蓮如上人は1471年から1475年まで本願寺系浄土真宗の布教のためこの吉崎に滞在しました。その後吉崎は急速に発達し寺内町を形成したのです。4月23日から5月2日の間の蓮如忌の折に、吉崎出身の友人の招きで吉崎を訪ねたことがあります。たくさんの吉崎の人達が御坊の本堂趾にゴザを敷きごちそうを並べて、それはにぎやかなものでした。「蓮如さん」の御山にそぞろに集まり、葉桜のはじまった頃の行事を地元の人たちは今も大切にしているとのこと。

本堂趾に向かう石段

本堂に向かう階段

雨の中の蓮如上人像〔高村光雲作〕

雨の中の蓮如上人像〔高村光雲作〕


本堂跡地から見下ろす北側に北潟湖が見えます。大聖寺川と合流するところにぽっこりと島のように鹿島の森が浮かんでいます。ゆっくりと蓮如御山をあとに石段を下り森へと向かいました。鹿島の森は、鹿島明神をまつる神秘の島と言われ、蓮如上人がこの森を御山から眺めて思索していた話が伝わっています。深い瞑想の森は古くは天台宗の霊場として、まだ江戸時代には法華経の道場として使われていたこともあるとか。そのため、鹿島の森は数百年も木を切ることはなく、人の手をいれることがなかったと伝えられています。森にはタブの木、スタジイ、ヤブニッケイなどの常緑広葉樹が荘厳に立ち上っていて、この植生だけをみると、普段私たちの周りにある杉林ばかりで覆われた山はもともとの姿を留めているのではない、と思い知らされます。古来からの森のありようがそのまま残った貴重な原生林は深い緑の芳香が満ちて、荘厳たる静けさ、頭上の枝が交差する葉隠れに息をひそめる鳥たち、苔むす地中にうごめく虫たち、太い幹の木々の精霊たちが、ここを訪れる人たちを大きな霊気で包み込むのです。

吉崎 鹿島の森

吉崎 鹿島の森

吉崎御坊願慶寺

吉崎御坊願慶寺


森での瞑想の時を過ごし、海沿いの道に出ました。越前海岸へとつながる通りに晩夏の風が気持よく通っています。